「図南(となん)の翼 十二国記 エピソード 6」読んだ

 「風の万里 黎明の空」につづくお気に入り。陽子の時代で一番長く王位にあるのが雁(えん)王。つづく長さの 100 年以上だったか治世する恭国王・珠晶(しゅしょう)。若き(見た目)女王でありながらその長い治世をもたらすはじめとなる王にたつために旅するロードストーリー。

 少女時代にすでに王は斃れていて国は乱れており、しかし大人たちは誰も王にたとうとしない。豪商の娘であったがゆえに特に不自由のない生活ではあったものの、使用人たちの生活の実態を知ってなにかわだかまりを覚える。

 やがて、大人がだらしないならわたしが王になるしかないと昇山(しょうざん)を決意。家の金と奇獣をくすねて旅立つ。途中奇妙な仲間を得て逢山(ほうざん)を目指すが、簡単な道のりではなく金を奪われそうになったり命を危うくしたり。なんとか逢山にたどりついたところで魔物の棲む世界は想像以上に恐ろしい場所でたやすくはない。

 そんなくだりを時にコミカルに、時に哲学的に描き出していて実に読ませる。最後の叫びは実に当然でもあるが、まあ、それは今このときだからそうであったのであって、彼女が生まれたときにはそうではなかったのだろうと読者としては理解もできる。それでも、その叫びは実に正しい。そんなホッとした最後を迎える旅路の痛快さが実によい。

 今作だけを読んでもまったく問題なく成立する物語ではあるものの、順序よく読んでいると、「これはあの?」と気づく部分も多く、物語世界全体を補完するに十分な作品であることもまた事実。

 ぜひ、この作品はアニメーションで見たいものだなと思うのだが、もう無理なのだろうか。

図南の翼 (となんのつばさ) 十二国記 6 (新潮文庫)

 

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「丕緒(ひしょ)の鳥 十二国記 エピソード 5 短編集」読んだ(すでに)

 短編集ということで基本的には本編の物語とは少し離れたところにある物語群。どちらかというとこの世界というものをより確かなものにするために補完される物語。

 王に関する儀式のひとつとして作りものの鳥を射落とす儀式があり、その鳥を作ることを生業としている官の話が表題作。その儀式のふしぎな光景であったり、それにまつわるさまざまが語られていって、世界観を補うにもおもしろい。

 春ころに読んだのでちょっともう記憶があやふや。

 

 

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「風の万里 黎明の空 十二国記エピソード 4」読んだ

 読み終えて半年くらい経ったので記憶は少しおぼろげ。とはいえ、アニメ化された部分ではあるし、中でも好きな物語ではあるのでひとまず記録。

 王にはなったもののこの世界のことが分かっていない陽子にとって、いきなり政をせよといわれても正直困惑するばかり。覚えることも多くそうでなくてもただの女子高校生でしかなかった身。そこで、一念発起して里におりて庶民の生活や、きちんとした師に教えを乞うことになる。その中で、女王を快く思わない一派による企ての渦中に引き込まれていく。

 陽子よりもはるか昔の日本から蝕によって流れ着いてしまった鈴。ことばもわからないままに辛い生活を送っていたが、なんとか仙籍を得て奉公することがかないことばの不便からは解消されたものの、虐げられる日々に嫌気がさしている。聞けば景王は自分と同じ身の上でありながら王になったという。きっと自分の身の上を理解して助けてくれるに違いないと慶国を目指す。

 北の芳国国王の娘であった祥瓊。父の圧政をいさめることもせずに贅沢三昧であったがゆえにクーデターによって身分をはく奪されてなお生きながらえる道だけはえたが、その事実を知っている預かり先で責め苦を受ける日々。やがて、実は王女であったと知れることとなり、その身を他国の王にゆだねることでなんとかふたたび生を得る。しかし、生来のお嬢様気質もあって自分がこのような待遇を受けることは理不尽であると宝を盗み逃亡。追手につかまりそうになったところを陽子の手助けをしこちらでの親友ともいえる楽俊に出会い、少しずつその気持ちに変化が生じていく。

 胎果でありながら女王になったという陽子への妬みをもっている祥瓊もまた陽子にあって恨みをはらそうと考える。そうして慶国を目指すふたりの少女(あくまでも見た目)の旅路と、いざ慶国にはいってから陽子を陥れようと画策する一団とによって大きな渦に巻き込まれていく三人三様の物語が、やがてひとつへと収斂していくさまが丁寧に描かれていて実に面白い。手に汗握るとはこのことという。

 壮大でありつつ三者三様の心の動き・変化といったものを丁寧に描き出していて単なる冒険譚だけにとどまらない感動を残してくれるというシリーズ随一ともいいたい傑作。(誉めすぎか?)

風の万里 黎明の空 (上) 十二国記 4 (新潮文庫)

 

 

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「東の海神(わだつみ) 西の蒼海 十二国記エピソード 3」読んだ

 読み終えてすでに三カ月は経過しているかと思うけれど、簡単な記録を。

 エピソード 3 は、延王と延麒の物語。延麒六太が昔助けた少年によって拉致され、国内の謀反を企てる男に幽閉されてしまう。そうと分かっても人質をとられているものの、これという証拠がなくなかなか動きが取れない。一方で王はといえば、そんなさなかでさえ安穏としていて部下たちに嫌味を言われる始末。

 さて、この一件を王はどう収めるつもりなのか。政には無関心を装い、街中で遊蕩三昧とみなされている王だが、実は街中に流れる噂やつてを頼ってかねてより情報を収集もしており、そうした中で大量の武器を調達したりして謀反の予兆をかぎ取っていたがゆえの目くらまし。

 じりじりとこちらのじれったさを増大させつつも、実は地道に対策は講じられていて、気づけば残るは首領を落とすのみという展開にいたるさまはなかなか読ませてくれるのはいつものこと。小悪党のざこらしさとあざとらしさもあいまって実に不快で、それでいて爽快な最後が待ってはいる。

 数百年続くという現延王の統治とはいえ、即位 20 年のころにはまだまだ世情は荒れていて苦難も多かった時代の物語。ふたりの忌憚のない関係が今に続くそのはじまりを見るような物語。

 

 

 

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「風の海 迷宮の岸 十二国記エピソード 2」

 続くエピソード 2 は、戴の国の王を選ぶまでの物語。

 この世界では麒麟が王を選ぶ。まさに天啓というもので、その人物に対してなにか特別なものを感じるといった不定形な理由によって選ばれる。が、ゆえに具体的にどうであれば王であるという指標のようなものがない。もちろん、一般的な考えから想像できるような人徳であったり、知識であったりといったさまざまな必要な要件はあろうけれど、必ずしもそれらがなくてもおそらくはよい。

 そういう麒麟というシステムについて概観できるエピソード。

 不遇の戴国においては王の不在が長く、さらには誕生した麒麟が災害によって日本に生まれついてしまったがゆえに、探し出すことに年数を要し、さらには麒麟として育てられてきたという経緯がないために知識も経験もまったくないままに数年を経てしまった。たまたま探し出して連れ帰ることはかなったものの、そこからあらためて麒麟として育てなくてはならないという苦難。そうして王を選ぶというまでのこの世界における仕組みを見ることができるエピソード。

 世界観を補完するに十分すぎる描写と設定。麒麟であるということの謎や苦難。王はただ選ばれるが、選ばれればそれは特別なものになることなどなど。

 そして、現状最終となるエピソード 9 の戴国の争乱の顛末までのはじまりとなる物語。ということで、まだまだほんのさわりに過ぎないが、世界感の壮大さに圧倒されるひとつ。

 

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「月の影 影の海 上・下 十二国記エピソード 1」読んだ(少し過去)

 実は 4 月ころにはすでに読んでいたのだけれど、もろもろで遅れてしまっていた。ひとつには記録のほうをどうしようかと。このシリーズはもともとシリーズ名はあとからついたくらいで作品タイトルだけだと話の順序がわからない。といってシリーズ数を先に取るとタイトルから探せない。さてさてと。

 ともかく。

 かつて放送された NHK でのアニメ。放送時は知らなかったのであとで配信で見たのだったろうか。それはいたく気に入って、この春にふとしたことからまた見直しているうちに、これは原作も読むべきだなということで読み始めた。ちょうど新潮社からすべてが出し直されていたというのもあり、また、公式のガイドブックというのも過去にでていたのでまずはそれを読んで概観してから読み始めてみた。

 アニメでは同級生男女も一緒にあちらの世界に行ってしまうという展開だったが、原作ではそれがなかった。なので多少勝手が違う部分はあったものの、特にそれが気になるとか物足りないとかはまったくなかった。基本の展開としてはおおむね同じで、その後の作品にまでうまくあらたに登場させたふたりを組み込んだアニメの構成もなかなか見事だったなというのが素直な感想。どちらがよいとかではなく。

 陽子を助けることになるネズミと人のあいのこ楽俊というキャラクターが実によく、その後も物語の重要な役どころを担うので、そこも楽しい。

 世界になじめなかった感のある陽子が、本来の世界にいきなり連れていかれ、右も左もわからないままになんとか生き延びてやがて渋々ながら一国の王となることをあきらめるまでの波乱万丈は、ひさびさの面白さ。それでいてそこそこ活字はたっぷりだし、なにより人名・地名がなかなかに難しいのだけはつらいところではあるものの、そこをクリアできれば、あとはもう物語世界にどっぷりとはまりこんで抜けれられない。

 なんちゃって異世界転生ラノベなど足元にも及ばない。そのくらいの格の違いを見せつけてくれる。

 とりあえずこのエピソード 1 となる本書を読んでみて気に入ったら、大人買い必至。

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