「厳寒の町」読んだ

 ようやく文庫の最新に追いついたアイスランドミステリ。しかし、正直なところ今回はあまり好ましくはない。

 というのも事件の背景になる社会問題が重く描かれてきたにもかかわらず、どうにもそれとは関係のない結末が終盤も終盤になってふいに現れるというような展開で、これまではいったいなんだったのだと思えてしまうから。

 さらには、事件に絡むのかといういくつかの問題がでてくるものの、ほぼあやふやなままメインの物語が終わってしまい(それも唐突だが)、あれはいったいなんだったのだ、と。

 次回作への布石、ということもあるのかもしれないものの、どうにもしっくりこない、すっきりしない。ただただ、凍てつく寒さだけが強調された作品だったなあというのが素直な感想。

 やたらとエリンボルクら捜査チームといさかいのような展開が増えるし、それもどうにも違和感が強くてよろしくない。うーむ。素直にいえば別人が書いたのでは、と思えるくらい。

 当初のあの勢いはどこへ行ってしまったのか。重厚な物語の展開。畳みかけてくる迫力はどこへ行ってしまったのか。どうも今作はこれまでと違って過去からつながるという展開のない作品だったがゆえに印象が悪いのではともいえるが、やはり別人が書いたのではないかなあ。

 次作以降もこうならばそろろそ見切るかもしれない。

 

厳寒の町 (創元推理文庫 M イ 7-5)

 

 

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「ヨコハマ買い出し紀行 10 11」を読んだ

 ちょっとずつ読み進めている。正直いろいろ謎の多い作品ではあるのだけれど、細かいことはいっさい出てこない。世界のことやらアルファさんのことやら、ときどきでてくる空の上のほうみたいな世界のことやら。

 残り 5 冊くらいのはずなのでたぶん、このまま謎はなぞのままに日常が描かれてほのぼのとゆったりと暖かい時間が流れ続けていくのだろうな。終末の寂しさとは裏腹に。

 アルファさんはそのままだけれど、子供(タカヒロとか)は大きくなって土地を離れていったり。ああ、アルファさん、やっぱりロボットなんだなあ、と。

 この日常の最後を見届けるまで、もう少しゆっくりと。

 しかし、電子書籍版しかもう残されていないというのは、なんとも残念。まあ、読めるだけましともいえるけれど。

 

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「アリスと蔵六 11」を読んだ

 一年に一度のということになってきた。正直前のほうを忘れかけているような。

 とはいえ、アリスの夢が少し落ち着いた展開にきたところで、ちょっと物語が変化してきたのかという穏やかさはある。どこへ向かおうとしているのだろう。

 妙に敵対する勢力との闘い、みたいな展開になるよりは、よほど穏やかな展開のほうがうれしくは思うものの、面白みがどう向かうのかはなかなか難しいか。

 いろいろと謎はちりばめられていて、無論「アリスの夢」自体については、まあそういうものとして扱ってもよいと思うものの、ほかのあれこれについては、一応の決着がつくような展開ではあってほしいな。とんでも SF でもいいから。

 

アリスと蔵六(11) (リュウコミックス)

 

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「数学ガールの秘密ノート やさしい統計」読んだ

 秘密ノートのストックがたまる一方なので少し消化するためにひとまず読むという方向に。

 とはいえ、「ほほう、なるほど」とその時は思うものの、なかなか手を動かすことをしないので身につかない(しろ!)。

 今回は統計。冒頭こそいわゆる「統計の嘘」をどう見抜くかというあたりなのだけれど、以降はしっかり統計について履修することになるのでなかなかハードではある。

 もちろん、それによって統計とはなにをしているのか、その用語の意味することはなんなのか、といったところを数学的にきちんと解明してくれるので全体的な意味の理解は進む。

 現代において「学ぶ」とは、搾取されないために学ぶという意味合いのほうが大きいようにも思うので、いろいろなことに興味を持って、覚えていないまでも「そういえばなにかあったな」と調べなおすきっかけを持っておくことは有益。

 それにしても、いい加減ミルカさんがやきもち焼いてしまうぞ、僕君。

 

数学ガールの秘密ノート/やさしい統計 (数学ガールの秘密ノートシリーズ)

 

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「STEP2 eguchi hisashi illustration book 2」読んだ(というか、見た)

 江口寿史さんのイラスト集「step」の2作目。1作目も買ったので、ついついまた買ってしまった。

 なにより女の子がとてもかわいい。表情とかしぐさとか。

 男性俳優とかタレントとかの少しデフォルメした感じの顔とかもあるけれど、これはこれでさすがにうまいなあと感心する。

 高級というよりもおしゃれというのがふさわしいスタイルもよい。

 まあ、目の保養ですよ、目の。と、言い訳するくらいには、よい。

 

 

【初回限定ダブルカバー】 step2 ― Eguchi Hisashi Illustration Book Ⅱ

 

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紙書籍は売りたくない honto のはなし

 honto.jp の検索結果。どうも最近おかしいと思ったらデフォルトでは電子書籍しか検索しない仕様に変更になっている。以前はどちらもでてきていたはずなのだが、どうやら電子書籍を優先的に売りたいと。

 まあ、荷造りの必要もないし、安上がりですものね。なるほど。

 ということでリロードされるたびにチェックを紙に入れ替えておかないと大変な目にあう。

 いっそ電子書籍専門ウェブ書店とすれば潔いようには思うし、そうなったらよそで買うだけなのだが。

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「数学ガールの秘密ノート 場合の数」を読んだ

 数年前に大量にまとめて買った本のひとつ。少しずつ消化。

 数えるということをテーマにして、数えるとはどういうことか、どう数えなくてはいけないのか、なにが問題となるのかといったことを例を変えながら数学的に思考していく過程。

 ミルカさんが登場すると、とたんに場の空気がシャキッとする感じ。それでいて’僕’にたいしては、ときどきシャイになったりしてかわいい。早くミルカさんと僕のいちゃラブな結末を書いてくれないかしら。

 数学的な思考、科学的な思考、そしてその思考をささえる正しいそれらの知識。そうしたものが無益なようでいて、明るく平和な生活のための礎になっているということを知らないままにいると、悪い政府や金持ちに騙され搾取されるだけの人生になってしまうよ。

 数学は大切だ。

 

数学ガールの秘密ノート/場合の数 (数学ガールの秘密ノートシリーズ)

 

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「青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない」(青ブタ 13)を読んだ

 さすがはライトノベルというわけでもないが珍しく二日で読んでしまった。楽しみにしている作品であることや、文章がこなれているので読みやすいとか、比較的短文が多いので隙間も多いとか、まあいろいろ理由はあるだろうけれど、面白く読んだことは間違いない。

 そういえば前作の最後に麻衣さんと温泉デートになんとか行けたというところだったかと思い出し、ここ数作でキーワードになっていたミニスカサンタの霧島透子(きりしまとうこ)の結末となるのだなと。

 意外と半分ほど読んだところで、これで解決するのかと思わせておいて、さすがに残り半分あるのにそういうことにはならず、最後の最後までお楽しみは残していた。ただ、これまでの作品から思うとやややっつけな解決な感じがしないでもないなあと。すでに本来の自分である岩見沢寧々であることを忘れてしまうまでになっていたのに、それもかたくなにそうであったのに、とくになんということもない展開で一瞬にしてそれが氷解するのは、ちょっと都合がよすぎたかと思わないではない。

 まあ、物語なんだからそれでいい、とはいえる。

 麻衣の危機を救い、無事に運転免許証も取得したというところで終わりだが、どうやらいよいよ最終章ですと書かれているので、この物語も残り何冊かで完結ということになるのか。

 すべてすっきりさせて終わるのか、余韻というか不穏を残して終わるのか、楽しみなような不安なような。それでも、最後を見届けますかね。可能なら完結後アニメ化のほうも完結まで行ってくれるとよいなあ。

 

 

青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない (電撃文庫)

 

 

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「詩歌川百景 3」を読んだ

 冒頭で鎌倉から戻ってきたという様子があるので、さて、そういう展開はあったのだろうかと前の巻を探していたらどうにも 3 巻が見つからない。おかしいな、買い忘れたか? とか思ってよくよく見れば、今回買って読んでいるのが 3 巻ではないか。いやはや。

 精神を病んであやしい宗教方面に貢いでしまっている母親をめぐる展開は、多少なりともそうした被害を知っている人にとって痛い話でもある。本当にこの手の輩の憎らしいこと。なぜ、母親がそんなものを信じてしまったのか、理由を知りたいという問いに診療所の女医が答えることばが実に納得する。

「あえて言うなら

ありえない形の ジグソーパズルの ピースが あらまビックリ! ぴったり ハマっちゃった

みたいな 感じ?」

 村社会のよいところも悪いところも見事に物語に織り込んでいきながら、こうありたいよねという方向を目指すという物語を描くとうまいなあ。

 きれいごとだけではやっていけない。あきらめだけでは辛すぎる。だから、一生懸命もがくのだろうな。「海街ダイアリー」にも通じるというか、脈々とつながる物語なのだなとあらためて実感する。

 現実はそう簡単ではないけれど。

 ああ、また一年待たなくてはならないのかあ。

 

詩歌川百景 (3) (フラワーズコミックス)

 

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「昏き聖母」を読んだ

 フィデルマシリーズ新作。今回は発売からさほどたたないうちに読むことになった。読み始めたらあっという間に読み終えた。もはや年寄にとって読書も疲れるのでどうしても時間をかけてゆっくりになるのだけれど、これはついついページを繰る手が止まらないという類の作品で、いつもよりもやや早いペース(とはいえ、早い人とは比べものにならないほどには遅い)で読んでしまった。

 フィデルマの相棒ともいえるエイダルフが、少女強姦殺害の罪を負わされて、しかもあろうことか、本来はない死刑制度をとっとと適用してしまおうとする一派が教会内の実権を握っており、かけつけたフィデルマにしてもこれという有力な手をうつこともかなわないままに物語が進んでいく。もどかしい。

 気づけばフィデルマと一緒に慟哭し、歯ぎしりし(いや、フィデルマはしないけれど)、いらだたしさに落ち着かない。そんな読書。健康にはよくないか。

 が、下巻に進むころには急に潮目が変わり始め、とはいえそれは決してエイダルフに有利にではなくむしろ逆に不利ともいえる展開で、いっそうフィデルマの仕事を困難にもする。作者は今回少々やりすぎたのではないか、と心配するくらいに。

 事実、本当の本当に終盤、ページ数でいって終わりまで 20 ページくらいまで明かりの見えない感じの展開が続く。それがボラーンの登場で一変し急転直下とでもいうべき大団円を迎えるあたりは、ちょっと無理が大きかったかという印象はぬぐえない。

 まあ、フィデルマシリーズではどうしてもそういう傾向はあるのだけれど(時代設定による制約もあり)、それにしてもという感じになってしまって謎解きがあまり納得感のある証拠の登場なく終わってしまった印象。

 とはいえ、ようやく己の心に素直になれたふたりの行く手には、まだまだ暗雲がたれこめているようで、読者を楽しませこそすれ、ふたりにはとんだ試練であることよ、と同情したくもなる。

 昨今でも死刑制度についての議論はあるし、この作品世界のいう法もたしかに望ましいものなのではないかと思わざるを得ない。自らが性急に裁可を下したエイダルフの死刑についての再審議に異を唱える若き王フィーナマルに対してボラーンのいう言葉が重い。

「その者が死んでから誤りを正すよりも、生きているうちに事態を調査し、誤りを正すほうがよかろうて」(下巻 P.225)

 田村さんの訳も実によくて、わかりやすく流れるような描写。映像が浮かんでくるかのようで本当にありがたい。次も楽しみだ。

 

昏き聖母 上 (創元推理文庫)

 

 

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