2025年冬アニメ 見たものまとめ

■ アオのハコ(2クール目)

 雛が告白して、ずるずるきて最終できっちり断られて大泣きして千夏と制服デートの待ち合わせまでいって終わったので、まあ続けますよねと思っていたらやはり二期をやるらしい。とはいえ原作のほうの話がもれてくるのを見れば、さほど進展があるというでもなく学生生活が続くだけみたいでもある。きっちりと一定のところまでたどりつくのやら。いや、それはどこなのだというのはあるのだろうけれど。

 丁寧に作られていて見られる作品ではあるものの、物語としては今ひとつしっくりしないところもあったりで、まあ、恋愛ものはつきあいだしたら終わりという面はあるので仕方ないところではある。そのうえで面白くできたらよいのにねえ。二期は早くても来年終わりくらいではなかろうかと思うので、当面はないな。

 

■ グリザイア ファントムトリガー(TV)

 前半の個々人についてのおいたち的な部分はそれなりだったのだけれど、終盤の作戦のやつはほぼ意味不明な状況と展開でなんだかなあな感じが。雰囲気を見せられているだけなら変な理由付けはいっさいなしでよいのにとも。

 どちらかというと次回予告のゆるさが一番よかったという印象ではある。

 

■ Unnamed Memory Act.2

 原作だと本編最後までということなのだろうか、という終わり方だった。であれば少し飛ばし気味だったのだろうかというのはある。ただ、2 クール目はやや話の展開とかがぎこちない感じもあってちょっとしっくりしない感じで終わってしまった。物語としては良い感じにリセットされたようなのでそれはそれでめでたしめでたしなのではあるが。

 作品の出来としては作画方面での未熟さとかはあって、そのあたりはまだ経験の浅いスタッフが多用されていたということなのかもしれない。総合的にはきちんとしていたと思うのは、シリーズ構成が赤尾でこさんだったことも大きいのかなと勝手に思ってはいるけれど。

 場合によっては、テレビシリーズでは最後のところは省いておいて劇場版で最期をくらいな作りなら尺の点でも納得いったのかもしれないけれど、いまさら。どちらかというと原作にあたってみようかという気分になれる作品ではあった。文章もきちんとしていたので。

 

■ 薬屋のひとりごと 2期

 今回も 2 クールあるのでまずは前半。相変わらず丁寧な作り。たまにあいだに挟まるインターバル的な小品が余計なようにも思えるが、尺つなぎという意味でもあろうからそのあたりは致し方ないのか。

 わりと早々に壬氏の素性がわかるように作られていて、なぜ猫猫にはわからないのかという感じは多分にある。狩りの顛末では、話そうとして話せず、また話させずでもあったが、完全に淫行におよぼうとしている体勢の壬氏さまはさすがにちょっと。猫猫ももう少し抵抗しなさい、未成年女子なのだからとか思うのは、こちらの世界、時代の故でしかないのか。

 どうやら残り 12 話で 1 期からの事件も含めて解決させるような気配で、そうなるとこの作品としてもまあ終わりかとは。コナンくん的な展開でないだけはよかった。原作をしらないので、そちらでどのように今も続いているのやら。ふしぎと原作にはまったく興味がわかない作品ではあるのだった。

 

■ 全修。

 当初は「SHIROBAKO」的なものを想像していたのだが、まったく違った転生ものだった。しかも、そのあたり具体的にはいっさい描かないのでおそらくは夢落ち的なものでしかなかったのではないかと。

 はじめは過去の著名なアニメのカットを模倣することで話題性をとったというところだけれど、まあ、展開としては他人を頼らず、認めず、自分だけでなんとかすればいいと思いあがっていたナツコの成長物語だったというのはある。最後に現実に戻って作品がヒットしてというあたりの件はやや尺が足りないので物足りなさがあるけれど、まあ、仕方ない。

 ある意味、アニメは大勢の力を結集して作るものだから独りよがりはダメだよという新人教育作品だったと言えなくもない。という意味で、可もなく不可もなくという作品だった。

 

■ ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います

 原作はまだ続いているというのもあって、なんだか半端なところでこれからも残業は続くという感じの終わらせ方。なろうの典型ともいえそうだけれど、内容そのものはあまりなくて、もっと日常でよかったのではという感じは確かにある。なぜアリナにそんな特殊で強大な能力が授かったのかとかは一切わからないし、そもそも、それが早々に知れてしまうという展開も潔すぎるというか。

 そして、魔物との闘いもどちらかというとあっさりではあるし。ありがちな死者をよみがえらせたいとかいう理由で蛮行に及ぶとかもなんだかなというところはあり。いっそ、アリナさんかわいいで押し通していたほうが面白かったのではないかという感じもするが、原作との兼ね合いはわからないのでなんとも。

 続きの予定は聞こえていないけれど、まあ、このくらいがちょうどよいのではという。

 

 

 

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「九龍ジェネリックロマンス 1-10」読んだ

 アニメの放送前にとひとまず 1 巻と読んでみたら面白かったので一気に既刊 10 巻まで。「恋は雨上がりのように」の作者の次の作品で気にはなっていたのだけれど、なんとなくそのままにしていた。

 当初は九龍地区でのラブロマンスとサスペンス的なものかと思っていたら、割と早い時期に SF だと知れた。クローンとか言い出して、なるほどと読み進めると、どうやらそうではないらしいと分かってきて、ファンタスマゴリア方面らしいとわかってなんじゃそりゃとなる。今、ここ。

 謎、そのものは、どうもあっさり明かされてしまうし、おおむね年一冊くらいの刊行ペースにしては次巻が半年ほどのこの4月に出るというところを見るとそろそろ完結なのかという感じもするが、連載は追っていないのでわからない。アニメにしても 12 話とすれば途中を多少端折って結末までいけないことはないだろう。さて。

 余談ながら、「恋は雨上がりのように」のアニメは連載中(まもなく完結というころ)で放送されたため、結末のおおむねの傾向だけを反映してのオリジナルで終わった。けれど、原作のその後の展開がとてもよいし、さらにはその先のふたりが思い描ける部分もあるので、そのあたりだけ OVA にでもしてくれないかなあとずっと思っている。今回たまたま見直して、読み直していっそうその思いを強くしたのだが、現状の業界ではつまみ食いにしか興味がないので無理なのだろうなあと悲しく思うのみ。「やがて君になる」だって、あれで終わりはなかろう? やれやれな業界ではある。

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「メイドスケーター」を読んだ

 ずいぶんと前にたまたま見つけたメイドがスケートボードに乗っているイラスト。それが実にかっこよい。ある意味対極にあるともいえるような奇妙な取り合わせなのだけれど、そのエレガントさが却ってすんなりと受容できてしまうというか。なんだろうね。

 ということを数年思っていたのだけれど、ここへきてそれを漫画にされて一冊目が刊行されたので、やや遅ればせながら購入した。思ったよりもよかった。などというと失礼かもしれないけれど、絵が上手というのと漫画として(物語として)上手か・面白いかというのは、イコールではないので。知っている限りでは、もともと漫画家ということではないようなので十分よく描けているなというのが素直な感想。そして、面白かったし、かわいかった。

 まあ、どこまで話をつづけられるのかということになるとわからないけれど、次が出るようならまた買ってみようかなと思うくらいには。応援の意味もこめて。

 そもそものグッズであった T シャツとかもそろそろ検討してみようかしらね。

メイドスケーター

 

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2024 年秋アニメ、見たものまとめ

■ ガンゲイル・オンライン2

 ふたつのエピソードがあったのだけれど、はじめのほうは途中からどうもあまり見る気がしなくなってしまった。なんだろうな。一期のころのような面白さは失われたという印象が。どこがというと難しい。ある意味、結局ドンパチやってるだけという感じになってしまって、しかも結果は見えているという(レンが勝つ)。

 二つ目にいたっては、そんな裏設定必要かという感じがしてしまってどうにも。この繰り返しならば、もう作らないほうがよいかなと。出来は悪くないのだけれど、続ける意味はもうないのかなと。

 

■ アオのハコ

 実のところは、あまり興味はなかったのだけれど仁井さんも関わっているらしく情報だけは早期から見ていたので、まあ見てみますかと見始めたら案外悪くなかったのだった。で、あまり進展なく終わってしまうのかと思っていたら 2 クールあるという。

 で、年内の 1 クール目はまだまだもやもやしたところで終わってしまった。年明けからの続きではたしてどこまで物語が進展するのかしらねと思いつつも、ステップシスターみたいなくだらないことにはならない感じはあるので、そこそこ楽しめそう。

 しかしまあ、この手のはつきあうまでが面白い作品だったりするので、つきあったらそこで物語終了という感じはあるので、さてというところ。

 

■ らんま1/2(2024)

 途中で終わってしまう(といっても話そのものが中途というわけではないが)ので、次の放送があるのが半年あまりは先というのがちょっと残念な感じはある。そのくらいいい感じにリメイクされていたのではと。うる星のときはあまり興味をもたなかったけれど(途中までは見た)、こちらは割とはじめから楽しく見られた。

 昔のやつはほぼ見た記憶がないのもあるかもしれない。とりあえずは続きを楽しみに待っている。

 

■ ダンダダン

 こちらも夏まで続きがお預けということで、さすがにここで終わりはないでしょという感じは。独特の演出がいかにもサイエンス SARU っぽいともいえるけれど、いい味を出していた作品とは。その意味でも、続きをここまで間開けてしまうと熱が覚めるだろうなという感は否めないか。

 どうも昨今の業界の営業計画というのが、雑でだめなのではないかという感じもしてしまう。熱とか勢いって大事なのになあ。

 

■ ささやくように恋を唄う(万策つきた 11,12 話のみ)

 そうだった。これがあった。が、話としてはきちんと区切りまでたどりつけたけれど、作品としては、今ひとつだったかなという印象だけで終わってしまったかな。人気の百合、バンドならいける、みたいなノリはもういいんですよと。

 

 

 ああ、この秋は本当に見たものが少なかった。本数はいつも数えきれないほどあるのに、見たいと思うものがあまりない。次の冬も同じような状況。

 

 

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「海がきこえる THE VISUAL COLLECTION」を買った

 なにやら今年の春から急にざわざわしていたらしいアニメーション「海がきこえる」関連。画集的な本が出たということで、見ていると「これはいいよ」という声がたくさんなので、つい購入。

 が、確かにこれはいい。大判なのでイラストが映える。作品そのものは、たぶん昔テレビ放送でもされたのを見ていたのかとは思うのだけれど、どうもはっきりとは覚えておらず、物語もあやふやどころかほぼ覚えていない状態だった。

 しかし、アニメのほうではタイトルの意味がどうにも意味不明な感じではあって、そのあたりどうなっているのかと気になったので原作小説が入手可能だったので買うことにする。

 怒った表情すらかわいいと思えてしまうイラストの数々とか、もろもろ見ているとよいわあ。

 この手のものは、ある時に入手しないとなくなってしまうので。

 

 

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2024 年夏アニメ、見たもの記録

■ 時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん

 出だしはよかった。ああ、王道的なラブコメに普通ならわからない謎なことばであるはずのロシア語でデレるというのがよいインパクトだった。

 のだが、すぐに生徒会長選挙とかいうのに絡んだ展開ばかりになって本来のおもしろさが消えてしまった。デレることも少なくなったし。なぜ、こうもそういうおかしな展開に持っていきたがるのか。俺ガイルとかもそうだった。設定としてのちょっと面倒くさい家庭はまあよいとして、そこから生徒会だの、ダンスパーティーだのというイベントを仕切るみたいなのは、なんだろうなとは。普通の学生生活ってのは、そういうものだったのか、今はと思うことにする。

 なにやら生い立ちとか境遇とかいろいろ面倒くさい設定があるようで、それを活かしたいがための生徒会長選挙とかなのだろうけれど、そういうのは別の物語でよいのではと思わないでもないか。

 半端なところで終わりと思ったら続きをやるそうで、まだまだこの展開で続くのかと。時間も空くことだしちょっと興味を失っていそうではある。

 

■ ダンジョンの中のひと

 特にチェックしていたわけではないものの、なんとなく見てみたら思いのほかよかったという作品。やわらかなタッチのデザインと、それをさらに上回るゆるーい演出とかもあって実によい。ダンジョンが自然に存在しているというのがこれまで多くの作品のスタンスだったけれど、実は運営している人々があるという発想がそもそも面白い。

 全体としては少し脈絡なくという感じではあったけれど、まあ、それも気にならないほどの作品の雰囲気の良さとでもいうものがあった。

 わけてもチビゴーレムのかわいさよ。エンディングのハイタッチならぬロータッチのリレーなんてもうかわいいが過ぎる。

 もしも続きがあるならまた見たいとも思うものの、まあ日常的な物語ではあるので(クレイの育ての親を探すという目的があるにはあるが)特になにもなくのんびり進むという感じではあって、あまり続けてもむしろつまらないかなとも思う。

 

■ 狼と香辛料 2024 年版 2 クール目

 かつてのアニメ化でとばしてしまった話を順番通りにいれるのだという大命題を果たすがためにリメイクしたという感の今作も終わり。そして、来年あたりに続きを放送するらしい。

 実のところ原作はどうだったのだろうということで一巻を買って読んでみたのだけれど、少し読んで投げ出してしまった。この文章はひどい。これをよくぞアニメの脚本に仕上げてくださったと脚本家の方に感謝したい。この脚本があればこそ、これだけの作品になれたのだ。

 映像は前作からは年数がたっていることもあって時代に即した丁寧なものに切り替わったし、それをささえるスタッフさんもきちんとしているので映像作品としてはよいものができあがった。まあ、同じものをまったく同じように見せられていた終盤まではある意味怠惰なところもあったわけだが。

 この原作者さんには、今後は自身で小説を書かずに漫画の原作者として活躍していただくのがいちばんよい道なのではと愚考する次第。

 まあ、物語としては好きだし、アニメとしては好きなので次回も見ることは見るだろうとは思うが、原作本を買うことは二度とない。

 

■ 義妹生活

 12 話使ってようやくプロローグが終わった。妙にまじめくさった文芸でございという匂いばかりが鼻について、せっかくの面白みがどこかへ行ってしまった。文芸、文学をやりたいというのが原作のようで、それはそれでよいとして、それにしてもいってみれば 3 巻終えてもまだふたりの仲がはじまらない。なにも起きない(実質的には)物語のなにが面白いのだろうかとは。

 いや、それでこそ純文学だというのなら、とっととラノベを止めてそういう土俵へ出ればよいものを。

 ラブコメではないというのはそれでいい。心の機微を丁寧に描きたい。それもいい。だからといってこんな間延びしたフラットな展開だけが延々と繰り返されて、なにもないままに終わるとかいうのは、視聴者を莫迦にしているというようなものではとも。

 毎回原作者が、短編小説かというくらいの長文解説をつぶやくとかも気持ち悪かった。そこまでしないと伝わらないならもはや意味がない。そんなもの必要なく伝わるのが本来求められるものであろうし、もちろん全部が伝わるはずもなく、そうしたささいなポイントについてだけひとこと補足するならありなのに。一から十まで解説いれないと伝わらないのでは、もはや本末転倒だ。

 制作としてもそうとう予算が限られていたらしく背景の安さはひどかった。魔法科高校の優等生を彷彿とさせるものがあったので、アジア系の安いスタジオに安く投げた結果なのではという感じがする。人物方面はさほど悪くはなかったけれど、せっかく仁井さんがデザインしたのだが、もったいない感じで作品に恵まれない人であるなあと、つくづく。

 

■ 先輩はおとこのこ

 これまたまったく気のないまま見始めたら案外よかった。単純に女装男子というだけかと思ったらそうでもなく。ただ、あまりにもメインの三人に大きなトラウマというか家庭や周辺の環境というものを設定しすぎてやや重すぎたというか、収拾がつききらない感はあった。

 それなりにまとまったけれど、結局劇場版を作ってしめるという計画だったらしい。ただ、これを劇場で見る人がどれほどあるのだろうとは。悪くない作品ではあるものの、ユーザーは少ないだろうなとも。

 

■ 物語シリーズ オフ&モンスターシーズン

 1 クールかと思ったらどうやらまだ続くようなので途中までということで。

 正直なところ少しこの独特のノリに疲れてきた感はある。忍の生い立ちに触れるというところは興味深くはあるのだけれど、ちょっと回りくどすぎるというか。撫子のところはコミカルさとテンポも悪くないのだが。

 自分が老いてきた、ということとも無縁ではないのだろうけれど。

 

■ 僕の妻は感情がない

 実のところあまり期待とかはなく、なんとなくたまたま見始めたのだけれど、案外よくできていた。

 ひとによってはあの姿のロボットに恋するとか気持ち悪いとか思うむきはあるかもしれないが、おそらくはあえてロボット然としたデザインにとどめたのではないかとは思う。人と区別がつかないような見た目のアンドロイドに恋するとかいう話はいくらでもある。そうではなくて、ヒト型ではあるけれど、やはりロボットと判別できる姿であるというところこそ意味があったのかなと。

 まあ、細かいことは抜きにしてそういうドタバタ的なところと、ではヒトとはなんだろうといったところまで垣間見せてくれる、そんなところがなかなか全体通してうまく構成されていた。

 制作としては手塚プロなのでそれらしいデザインでもあったが、実際の作業はほぼアジアのスタジオにまるまる出していたのではというクレジットだった。そして、それでも内容に即して十分なクオリティーの作品になっていたのはよかった。きちんとしたスタジオだったのだなと。昨今、ひどいところがまだまだ多いので。

 難を言うならば、男性キャラクター(特におじさん方面)のデザインがどうにもなじまなくてというのはあった。

 

■ 小市民シリーズ

 氷菓の古典部シリーズ原作者の別シリーズということで、制作こそ京都アニメーションではないが多少の期待はあった。が、原作ままということならば、もういいかなと。

 ただの犯罪小説、しかも女子高校生によるという極悪小説でしかなかった。嫌な相手を陥れるくらいならまだしも、自分が描いたシナリオどおりに犯罪を実行させ、あろうことかその被害者に自分がなりすますという悪辣さ。悪党小説でもなかなかない。それでいて平然としているまだ 15 歳とかどんなサイコパスか。

 小市民とは名ばかり。

 まあ、そういう作品なのだろうけれど、もういいかな。

 春、夏ときて秋、冬も来年放送するらしい。しかし、春は一年生だったのに、夏はすでに二年生。秋が二年生ままだったとしても冬は三年生だろうかという、季節が早すぎてそれもつまらない。古典部はよかった。

 アニメーションとしては悪くはなかった。実際、現在の京都アニメーションには良作はあまり期待できないので(技術の喪失は著しいだけでなく、能力の喪失も)その点は補ってあまりあった。とはいえ、氷菓と比べるとやはり見劣りがする。まあ、あちらがよすぎるというのはあるのだろう。

 

■ 菜なれ花なれ

 今期三作も出していた PA Works のひとつ。ほかは興味がなかったりで見なかったが、これはちょっと興味を感じたので結局最後まで見た。ただ、パルクールアニメみたいに当初言われていたのにさほど関係なかったのがなんだかもったいない。結局チアリーディングの話だった。

 さらには色彩設計が原色バリバリのけばいもので目がチカチカしてしまってそこはどうにも。ポルトガルとかラテンというのを意識されたのかもしれないけれど、ちょっとやりすぎた感は強い。

 一方でポルトガルというと帰国子女の役を演じた武田羅梨沙多胡さんの演技はとてもよかったし、ポルトガル語監修をお母さんがされたということで毎回クレジットされていてそれもよかった。

 話としてはそんな説教くさくしないでもっとおおらかでよいのではと思うのだが、どうも PAWorks オリジナルはこだわりすぎて重い。ヒットというには物足りない作品だったかなとは。最終話はとくに唐突すぎて。

 

■ 魔導具師ダリヤはうつむかない

 原作の評判は高いらしい。が、アニメーションは相当予算を抑えていて国内ではとても作れないレベルだったとしか思えない。クレジットを見てもそうだが、韓国・中国・東南アジアあたりのまだ未熟なスタジオでのほぼグロス制作だったのではという様子。

 おかげで物語そのものは悪くないのだけれど(異世界転生ものらしい多少の難は置くとして)作画とかアニメーションとしては、いろいろとダメさが多くてややげんなり。

 わけても人物にかかる謎の斜線影。本編だけならいざ知らず、オープニングでも存在しているのだから質が悪い。

 あくまでも推測にすぎないけれど、監督はじめ主だった日本人スタッフというのは名前だけであまり関与されていないのではなかろうかと。「お名前だけ貸してください」くらいな感じがしたりするが、実際のところは知りようもない。

 なんにせよ、原作者が気の毒なくらいではあった。物語は悪くなかったのだがなあ。

 

■ NieR: Automata ver.1.1a 2 期

 ゲームのほうをプレイしたのもあって少し理解が深まった。当初ゲーム内のムービーみたいでこま切れだなあという印象だった。もちろん最後までそういう雰囲気はあったわけだが、少し理解が変わった感もある。

 C D エンドでもなくきちんと E エンドへとゲームのような演出でもってきたあたりはよかった。もっとも、正直なところ、むしろその先のほうが見てみたいと思うのだが。

 アニメよりもゲームをプレイするほうがよいぞと強くすすめておく。

 

■ 負けヒロインが多すぎる!

 三人のメイン少女の負けっぷりをじっくり描いて終わった。いや、恋愛できないから負けってわけじゃない。

 ギャグの感じといい、演出の感じといい、実にしっかり作られた作品だったので、12 話でおしまいというのは少しもったいなかったか。

 とはいえ、続けたとしても似たような話の展開を繰り返すだけだったりするのでほどほどがよいともいえる。そうした繰り返しの学園コメディというのはたしかに存在するけれど。しつこすぎてもつまらなくなってしまう。アーリャさんのように。なのでこれくらいがちょうどよいのかも。原作は続いているようではあるけれど。

 

■ 逃げ上手の若君

 さすがのクローバーワークス。業界内の人に言わせるとテレビシリーズのこのクオリティ出しちゃダメだろ、それは劇場版にとっておけと言い出すわけだが、4K の時代その差異はなくなりつつあるのではという気はする。

 まあ、美麗な作画と一体化させた映像美はみごとなもので、そこへ頃合いよくはいるギャグとシリアスとが絶妙で一気にもっていかれる、そういう作品。一種独特の表現もまた多いのだけれど、これは原作の味というのをそのまま活かしているのだろうか。

 オープニング、エンディングの軽やかさといい、本当に娯楽という感じ満載の作品だったが、やや半端なところで終わってしまって惜しい感じがしたらほどなく二期の発表があったので、あるいははじめから分割二クールという予定だったのではとも噂されているようではある。

 なんにせよ、もう少し堪能したい作品なので喜ばしいこと。

 

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「詩歌川百景 4」読んだ

 honto が役に立たなくなったのでうっかり買いそびれるところだった。前巻から一年半ほどたつのですっかり忘れている。

 相変わらず社会を世間を見せつけつつも、ひとの心の姿を克明に描き出していてドキドキさせる。田舎がいいわけでもなく、ダメなわけでもなく。都会がダメなわけでもなく、よいわけでもなく。どこであろうとヒトが住む限り、まとまりができる限り、いろいろなわだかまりは生まれては消えていく。そんなことを再認識させる。

 それにしても鎌倉のすずちゃんはいつの間に結婚していたのだ! 誰と? 鎌倉の家にはすず夫婦しかいないようなことが書かれているけれど、ほかの三人はどうしたの!

 とかとかいろいろ疑問がわきまくる 4 巻だった。ほとんど脇の話。重箱の隅の隅。

 ご縁は大切にしたいけれど、やっかいな縁というのもまたあって、なかなか一筋縄ではいかない。よい縁だけを大切にできたらどれほどよいか。

 海街ダイアリーのその後についてもたまに短編で出してくれないものかしら。あの四姉妹の今を知りたいなあ。

 

 

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2024 年春アニメ見たもの記録

■ 魔法科高校の劣等生3期

 今回は原作が割と短めばかりなので 1 クールで 3 本。で、作画であるとか、演出であるとか、映像としてとかは申し分ないのだけれど、なんだろうね、どうも今一つ物足りなかった印象がぬぐえない。

 あるいはそれはそれぞれが割と短い作品であったというのもあるのだろうけれど、どうにも今一つ盛り上がりにかける内容だったというか、展開としても平板であったというか。

 ダブルセブン編は、7 を冠する二家のいさかいが子供の喧嘩レベルで描かれただけであったし、スティープルチェース編も九島閣下がでてきたり来訪者編で確保されたパラサイトを使った実験を九校戦でという華やかそうな設定はあるものの、競技そのものはいまひとつ盛り上がらない。最後の古都内乱編は本来原作二冊なのだけれど尺の都合もあってほかと大差ない 5 話構成というのもあってか、こちらも今一つ盛り上がりにかける感じは。

 脚本担当も同じ方のようではあるので、そこはさほど違いはないのだろうと思うのでコンテ演出の点でということなのか。そもそもの物語にあまり面白みが少ないということも、あるいはあるのかもしれない(原作未読)。

 ジミー・ストーンさんはじめての監督作ということで、いろいろ工夫されたりこだわったりされていたところの良さもあるのだけれど、どうも総合してみると物足りなかったというのが素直な感想。うーむ。

 

■ ゆるキャン△3期

 制作会社などなど変更になって心配したが、総合的にはこれまでの雰囲気を踏襲した作品作りになっていて、その点ではさほど違和感なく楽しめたし、雰囲気を維持してもらったのはよかった。物語の変化としては、そもそもあまりいろいろない作品だから、まあそんなものかと。

 そして、やはりまるっきり変わってしまった(原作に近いとは聞く)キャラクターデザインは、最後まで違和感だらけでここが同じであったならなあと悔やまれる。

 正直このまま続けてもだれてしまうので、そろそろ終わってよいのでは。

 

■ 終末トレインどこへいく?

 なんとなく見続けて、結局最後まで見たけれど、最後は万策尽きて一回休みで、とりあえず初期の目的を果たしたけれど、なにも変わっていないというか、なにもわからず終わったというシュールな作品になった。

 なにがしたかったのだろうね?

 

■ 響け!ユーフォニアム3

 完結といってよい久美子三年生編ということで、原作ファンもアニメファンも期待していたわけだけれど、正直なところもういいかなとなってしまった。

 詳細はこちらに書いたのでゆずるとして、あっと言わせたいだけのおかしな改変をしてしまったがためにもう原作の世界線から離れてしまったパラレルワールドになってしまったのが本当に悔やまれる。しかも、なにも解決しない。

 単体でみたらそういうのも作品としていいよね、わかる。泣けるよね。というのはあるが、これまでの集大成としての全体を見ていない変更は残念でしかない。

 本当に欲しかったのは 6 月下旬に発売された短編集「みんなの話」にあるようなものを取り込んだ展開だったのに、もうそういう世界線には戻れない改悪を脚本家がやり、それを監督他スタッフが許容してしまった。もう、このスタッフでは作らないで欲しい。

 どうかこころある他社によるリメイクを。

 

■ 狼と香辛料 2024 年版

 連続 2 クールなのでまだ 1 クール残っている。基本的に、本当に、前作とまったく同じ展開を同じペースで展開しているだけなので、本当に時間の無駄遣いといえばいえる。違うのは、冒頭のキーとなる人物が本来男性だったのを、かつてのアニメでは女性にしてしまったのがおそらく承服できなくてリメイクということだったのかしらねと想像するばかり。

 本当にほかはまったく同じだ。両者を同時再生させて比較したいくらいに。

 物語としては、基本気に入っているので見てはいるが、結局同じところまで作られるだけでその続きが見られるわけでもないとなれば、なんともやるせない。

 

■ ささやくように恋を唄う

 あまり興味はなかったのだけれど、なんとなく見ている。百合要素はそこまでなく、どちらかというと昨今はやりだからバンド漫画書きませんかという感じの原作か。

 万策尽きて 2 話ほど落としているのでまだ終わっていない。ということで、最終的にはもう少しあとで追記。

 

■ この素晴らしい世界に祝福を! 3期

 異世界転生ものってもう本当に砂場の砂粒ほどもあって辟易とするが、これはそういう嫌な感じがない稀有な作品。キャラクター設定がよいというのか、世界設定がよいというのか、妙に小難しい展開ではなく、といってコメディなだけでもないというバランス具合がほどよいというか。

 安心して楽しめるというのがよいのか。

 

■ Unnamed Memory

 これも特に興味はないままにたつざきさんというので見始めたら案外よい。作画とかアニメーション技法的なところでは、ちょっとレベルが落ちる感はあるのだけれど、赤尾でこさんが構成しているというのもあって全体がよくまとまっている。

 しかも、最終話では、それでどうなってしまうのだという展開で終わってしまい、これはもう見事というしかない。来年には二期を予定しているらしいが、これは期待できそう。

 青ブタの双葉とか、まほよめのチセといった系統ではない、別系統のたつざきさんというのもよい。続きを楽しみに待っている作品になった。収穫。

 

■ 夜のクラゲは泳げない

 前評判を聞いたので正直あまり興味はないままにそれでもと見ていた。どうもこの頃ガールズバンドものがはやりでよろしくない感じはある。

 とはいえ、オリジナルでここまでできたのはなかなかよかった。それぞれの内面とかにもきちんと踏み込んでいてそれをきちんと解消しようと展開させていた。十分だったかといえば難しいところもあるけれど、悪くない最後だったとはいえる。

 難を言えば、全体に重い空気をまとわせすぎたのかなというのはなくはない。あまり重いと抜け出すのが大変だ。続きはなくていい。このままで。

 

■ ダンジョン飯 2クール目

 原作は昨年に完結したそうで、となれば最後まで作ってくれるとよいのだがなと思う二期製作。まだまだ、物語の途上なのでしっかり描いてくれるとよいなあ。割と地味な展開だったりはするので人気は原作ほど高くないようにも聞くけれど、異色の設定(ダンジョンで魔物を食材にしてしまおう)というのを真剣にやっているのは、なかなか面白い。

 キャラクターの魅力も十分でそれだけでも話が展開してくれる。原作未読なのでわからないが、しっかりとハッピーエンドまで描いてくれたらよいなあと期待して次を待つ。

 

 

 

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アニメ「魔道具師ダリヤはうつむかない」の作画があまりにもひどい

 とにかく人物の影が適当すぎてあまりにもひどい。

 3話冒頭の場面、テーブルをはさんで座っている。影の感じは上からの照明という感じ(上二枚)。

 しかしダリヤが立ち上がるとなぜか影もそのまま上にあがってしまう。カメラが逆向きになるとあろうことか影が逆向きになる上に、より斜めになる。照明ではなく太陽なの? わずかの時間にそんなにも太陽が動く世界なの?

魔道具師ダリヤはうつむかない 第3話 好き勝手に描かれた人物の影その1

 

 というおかしな影(影ではないのかと思ったが、はいっていないものもあるので衣服の模様ではない)の数々。

 隣同士なのに相対する影とか、美容室では全景ではまったく影ないのにアップになったら急に深い影ができるとか。

 とにかくカットごとの作画が好き勝手にとりあえず斜めの線いれておきました。これでリアルな感じになりましたよね! とばかりにやっている。作監とか監督とか演出とかだれも異を唱えないのだろうか。やれば全部修正になってもう無理ということか。素人レベル。

 いっそなければなんの問題もないというのに、それ以外の作画はあらを言えばなくはないものの、まあ、あきらめのつく程度ではあるのに。なぜ、こういうことを許容したままにしてしまうのだろうかと。監督さんの名前に泥を塗るようなことでは。

 まさしく作画崩壊というべき作品。なのに、あまり言及する人がいないということはそもそも見られていないということか。

魔道具師ダリヤはうつむかない 第3話 好き勝手に描かれた人物の影その2

 

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世界線を狂わせてしまった響け!3期の罪

 「響け!ユーフォニアム」三期、久美子三年生編のアニメが終わった。最後に大いなる改変があったのでやはり書いてはおこう。

 アニメの 12 回と 13 回は基本的にほぼ全部がオリジナルといっていい。原作では、このあたりはほとんど触れられていない。全国大会当日の様子は真由が写真を撮るとか、金賞が取れたとかいうことがあっさりと数ページで書かれているだけ。二話使うほどのないようはまったくない。

 まして、12 回のようにユーフォニアムの最後のソリストをみなで決めるということはない。いつものように顧問たちが選抜して久美子が選ばれる。アニメでは真由にしてしまうし、しかもそれが麗奈の決定で決まるという展開。

 原作未読であったり、原作は読んでいるけれどという層でも、現実的な展開として感動したというような肯定的な意見は多くみられた一方で、ここを変えてしまってはこれまでの物語を全否定するようなもので、どうして変えてしまったのかという意見も一部にはみられた。

 個人的には麗奈というキャラクターからすれば真由を選ぶという展開もありだと思う。ただ、その場合の展開は花田さんの理解とはだいぶ違うものだ。

 麗奈は他人に厳しいだけでなく自分にもとても厳しい。それでいて人一倍甘えん坊なところもある。まっすぐだがまっすぐすぎるところがある。三期でも進路のことになって久美子が音大方面に行かないことをひどく気にしていて、再三こだわる場面が描かれる。ここは原作にもあるところだ。進学先はもちろん方向すら違ってしまったら、もうこれまでのような友達関係でいられないのではないかという不安に常にさいなまれている。(そもそも自分は海外に行くということを隣に置いて)

 久美子はそんな麗奈に、そんなことはない、自分たちは大丈夫だと伝え続ける。その時は、ホッとするもののそんなやりとりは何度か繰り返される。麗奈はそういう性格の女の子だ。

 また、実力としては確かに有能な真由の演奏についても、自分と真由とどちらがいいのかということについて、「わたしは久美子のほうが好きだけど」と久美子の音に絶大な信頼を置いていることを何度となく口にする。最後は一緒に吹こうねと約束もする。

 しかしながら、最後のソリの投票の際、まったくの同数だったという展開にして、最後の一票を麗奈に決めさせるという展開をとる。麗奈にはどちらが久美子の音だったかはよくわかっている。それでいてあえて真由を選ぶ。久美子との約束よりも、たとえわずかでも金をとる可能性が高いと思える、あるいは思いたい真由を選ぶ。滝のために。

 結果、久美子よりも滝を選んだという形になり自責の念にかられてひとり先に帰宅してしまう。その後、大吉山で久美子と再開させての展開は、一期の大吉山の逆再現をしたかったのだろう。(さらにいえばその再現のためだけにおぜん立てを考えたともいえるかもしれない)

 けれど、ここでどれほど久美子になだめられても、久美子のくやしさと部長としての矜持の強さを思えない麗奈ではないはず。ますます自責の念を強くするのが麗奈というキャラクターであるはずなのだが、どうも花田十輝さんのそれは違う。

 すぐに従来の関係に戻って一緒に笑顔で写真にも収まるし、滝を好きだといったからと仕返しのいたずらをするくらいになっているのは、どう考えても麗奈ではない。本来の麗奈であれば、当日までずっと引きずってしまい、久美子のことを避けているような女の子だ。実際、滝の奥さんの話を橋本から聞いていたのに話してくれなかったと怒ったときには、しばらくひとりでぷんぷんしていてあってもくれなかった(理由もいわずに)。そういう子だ。

全国大会本番直前、滝を好きだと言った意趣返しをする麗奈。響け!3公式

 それがすぐに元通りで完璧な演奏を当日してなどありえるわけがない。現実的な展開というのならば、むしろ麗奈がいつもの実力をまったく発揮できずに銀はおろか銅賞どまりだったという展開のほうがふさわしい。

 そうしてそれは麗奈に二重の意味で枷をかしてしまうことになる。久美子を裏切ってしまったこと。にもかかわらず滝へも金賞を与えることができなかったこと。これはもう立ち直れない。

 仮にここは金賞はとったという展開に戻したとしよう。けれど、久美子と一緒にではなかったことの取り返しのつかないという思いはますますつのるだろう。金はとれた。それは確かにうれしい。けれど、なにか違う。そう思うはずだ。滝への思いははたせたが、もっと大事な久美子との友情にひびをいれてしまった自分にますます思い詰めてしまうのではなかろうか。

 結果、大会後引退してからは久美子とは距離を置くようになるだろう。クラスは違うので普段会うことはほぼない。部活ももうないのだ。そうして年が明けたくらいに誰にも告げずにアメリカの留学先に向かってしまうくらいはある。卒業式にももちろん戻ってなどこれない。どの顔をして戻ればよいというのだろうと思い詰めるだろう。(「みんなの話」には次期幹部を決める話その他があるが、それら一切も不可能な展開になってしまう。そこに麗奈が以前のようにいるから)

 そうこうして麗奈とだけは音信不通のまま 2024 年春を迎えることになるほうが、よほど現実的な展開だと思うのだが、それは改変というものだろうか?

 さらには、改変したことによって、では真由の抱える問題についてしっかりとした解決がなされたのかというと、そんなことはまったくない。一年生編のときのあすかのようなことでもない、香織と麗奈のときのようでもない。12 回 13 回とまるまる二話分オリジナルだったので時間がなかったとはいわせない。むしろ、どう収めてよいのかわからなかったというしかない。原作でもそうだ。そのあたり真由の面倒な性分はそのままで終わる。

 そこが、もしも描かれているなら真由に変更したことはそれなりに意味があるだろうが、そうしたことがないままではなんのために変更したのかがまったく見えてこない。決定の際の久美子の最後のことばで救われたのだといいたいかもしれないが、あまりに弱い。

 そもそも、これはフィクションなのだ。現実的な展開を優先するのではなく、理想をつめこめばそれでよいのではないか。まして、社会派のノンフィクション的な映画というわけでもない。苦楽はあれど高校生活というものをフィクションしたアニメーションなのだ。最後は理想的なおとぎ話でなにが悪いのか。

 努力は報われなかったが結果オーライなのだといってよいのだろうか。この展開で久美子と麗奈のしあわせな現在は思い描けない。先のような音信不通の今しか、少なくともわたしには思い描けない。そのくらい罪深い変更を作品スタッフはしてしまったのだが、そういう認識などないのだろうな。

 京アニにしては、2019 年の事件によって多大な人材を失っており、いまだ一期・二期のような作品クオリティーは出せないためにこうなったのではないかという意見も見聞きする。それは、確かにそうかもしれない。最終回の演奏シーン。もう少し演奏風景が作画されるかと思ったら、これまでのシリーズからの回想カットばかりだった。それくらい技術が不足していると見る向きも正しいのかもしれない。

 けれどおよそ 10 年にわたった大きな作品。多大な評価を得ていた作品の最後がこれでよかったと本当に思っているのだろうかと。今できる最善がこれだと胸を張って言えるのだろうかと。技術的なことは置くとしても、作品としてこれでよいのかと。

 幸せな世界線を破壊してしまった責任はだれも感じていないのだろうかと。

 原作者の武田さんは、別物として楽しんでもらえたらというようなコメントをされている。では、これまではなんだったのだろう。これまででもっと大きな変更がされなかったのはなぜだろう。最後の最後、尺的なものもあり、また原作ままだけではつまらないのでなにかやりたいという変な欲のために下手な改変がされたということではないのだろうかと。

 なんともやりきれない。

 個人的にアニメ三期は封印するしかない。原作の追加で発売された短編集で少し正しい歴史の余韻にひたるくらいしかできそうにない。

 どこかよその制作会社で、まったく別のスタッフで、いちから作り直してくれないものかと切実に思う。リメイクばやりではないか。端折られてしまった二年生編も含めて、どこか意気のあるところで作り直してはくれないものか。

 少なくともこれは、わたしが見たかった響け!シリーズの最後ではない。久美子と麗奈がほんとうに素直に抱き合って金賞を喜べる、そういう展開の最後をアニメーションで見たかった。

 そう切実に願ってやまない。

 残念ではあるけれど、今後の京アニには以前ほど信頼は置けないし、花田十輝脚本作品ということならば見ることを遠慮することになると思う。ご本人もオリジナル楽しいといわれているので、今後は原作ものはやめてオリジナルだけにしていただくのがよいのではないかと。「小市民」シリーズが他社になったのもよかったと今なら思える。(あ、立華編もよそでお願いしますね。間違っても劇場版総集編とか言い出さないようにもお願い申し上げます)

 

追記:

 そもそもでいえば大人である顧問の滝が責任を放棄しているというのも問題で、一年生のときの麗奈と香織の問題は、当時二年の優子が滝にいちゃもんをつけたことを発端に希望者にはもう一度全員による投票で決めましょうと言わせたもの。基本的に責任を放棄したものではない。それを生徒にはじめからおしつけてしまうようなオリジナルの展開はそもそも無責任。

 このタイミングで発行された「みんなの話」を読み進めていたら、そこには本当に見たかった世界線があった。全国大会終了後のバスを待つ空白時間。奏の元にやってきた真由との短い会話を描いた掌編。そこに真由の心のうちがようやくといっていいほど描かれ(その前にも以前の真由の体験の短編もある)、そしてようやく奏が「真由先輩とお呼びしても?」という件が描かれる。真の和解。

 けれど、アニメの世界線でそれはありえない。あったように描かれたエンディングはまさか妄想の世界だ。続く、顧問たちの慰労会。次期幹部を決める短編たち。いずれもアニメの世界線ではありえない展開。もう、そこにこうした物語は描けない。麗奈が久美子と一緒にいるという世界があの世界ではもう想像できない。想像したとしたらそれは妄想でしかない。それは先に書いたとおり。

 まして、卒業旅行なんて。世界を狂わせてしまった責任は重い。

 だからこそ、今少しだけこの短編集に救いを求めるしかなさそうだ。

 

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