「火星の人」(アンディ・ウィアー)
三年以上前に購入の電子書籍版をようやく読了。読み始めてからはそこそこ(近年の自分としては)早かった。寝る前読書とはいえおおむね二週間くらいだった。
話題になったのに読んでおらず、いまでは同じ著者の別の作品が話題になっている始末。そちらを読むのはいつになるやら。
映画化もされていて、たぶん映画も見ていないような気がする。断片的な映像は覚えがあるのだが。
簡単にいえば有人火星探査チームから不慮の事故によりただひとり火星に残ることになってしまった宇宙飛行士のサバイバル。帰途についた宇宙飛行士たちは、彼が死んでしまったものと思っているので(地球のチームはしばらくして彼が生存していることを知っていたが、帰還チームに知らされるのはかなりたってから)やや自責の念にとらわれている。
一方、火星に残されたワトニーは、なんとか知恵と工夫でサバイバルを緻密に進める。この過程が実にリアルにせまるもので面白い。昨今、フィクションで描かれた宇宙が実際のそれと大違いすぎてつまらないといった話が話題になってしまったけれど、このサバイバルがどれほど現実的なのかは知りようもない。ことによると嘘ばかりということだってあるだろうし、けれどこれはフィクションなのだから。
フィクションとはいえ、実に真に迫る描かれ方で、これは素人が読んで、見て楽しむには十分すぎる内容だ。あまりに緻密すぎてむしろ詳細を検討したりする意欲をそぐ。
そして、何度となく危難に遭遇しつつも少しずつ帰還へ向けて動いていく様が火星と地球とで描かれていくテンポも実によい。いかにも映画に向いている。あるいははなからそういう脚本として書かれたものだったりするのだろうか。残念ながら電子書籍版というのは、あとがきとかいっさい省かれてしまっていて本当に意味がない。そこだけはどうしようもなくダメだ。
最期まで息つく暇もないほどの展開が続いて、まさにエンターテインメントという感じで、これを映像で見たらそれはまた面白かろうと。機会があれば映画のほうも。
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