「響け!ユーフォニアム 3 北宇治高校吹奏楽部、最大の危機」
昨年 2021 年暮れに読み終えていたのだけれど、ずれこんでしまった。アニメを見て気に入って「原作もいいよ」と聞いていたので少しずつ読んでいるもの。
確かにアニメとは設定とか、展開とかエピソードとか少し違っているけれど、原作のそれはそれでよいし、アニメはアニメで枠が決まっている中で取捨選択するということもあるし、効果的な展開のさせかたも考えて全体構成していて十二分によいと思っている。なので、なるほど原作にはこういう展開をさせているのかとか、ほんのささいなエピソードがあったりして作品世界全体を補完するという意味でそれはとても有意義。
副部長でもあるあすかの家庭事情におおいに踏み込んだ三作目では、ここまでにはない重さがあるものの、あすかの人柄を裏付ける話でもあり、それがあるからこそうすっぺらい青春物語に終わらないともいえる。
利己的ともいえそうなあすかの私情と、あすか不在によって気づかされた部内における彼女の存在であるとか、部全体を含めてそれぞれが考えさせられていく経過がよい。滝の決然とした姿もまた亡くした妻への思いとかもあいまって物語に深みを与えているし。
全国にはあっさり行かせてしまうが、決して金を取らせるような安易なことまではしないというあたりも悪くない。いろいろの場面で結果はもう知っているのに不覚にもうるっとさせられてしまう。ちょっと入り込みすぎたかな。
このあと劇場版にもなった久美子二年生編があり、久美子がとうとう部長となる三年生編も制作されるというので、原作のほうもぼちぼちと。
で、読むとついアニメのコンクールの演奏シーンを見たくなっていけない。あれはもう神の領域ではないかという。それらを作ったであろう失われた人々の命もまた。
響け! ユーフォニアム 3 北宇治高校吹奏楽部、最大の危機 (宝島社文庫)
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