「たんぽぽ娘」(ヤング)
単行本がでたころに気になっていたのだけれど、そのまますっかり忘れてしまっていた。この頃なにかのきっかけで出会ったので、いや、思い出したバーゲンブックにでてきたのでこの機会に買おうかと見ていたら文庫もあってそちらでよいかと半額になっている単行本ではなく文庫を買ったのだった。
で、読んだ。
表題作「たんぽぽ娘」は実によい。確かにメリルが惚れるのもわかるし、伊藤典夫さんが惚れるのもわかる。実によい味。
で、全体として思うのは、ファンタジー系の作品はよい味を持っているけれど、それ以外の作品はどうもあまり好きになれないなということ。なんだろうな。小難しい言葉をつらねたら SF? みたいな感じがしてしまう。
対して「たんぽぽ娘」をはじめとしたファンタジー系のものは、小難しいことはいっさいなく、仮に科学的に設定を検証したらいろいろ矛盾とかあるかもしれないが、そういうことを感じさせない物語のよさというものがあるというか。柔らかく平易な文章でつづられる物語の最後に、あっと思わせるなにかが待っている。
それは、時間 SF 特有のものかもしれないけれど、そこでハードな設定云々を言い出すと物語としての面白さを損ねてしまう。あくまでも物語として素直に楽しむべき作品たち。そういう作品こそヤングの真骨頂なのかなと。
ということで、好みにあうのはわずかではあるが、ヤングの世界を知る一助ではある。次の短編集という話にも触れられてはいるものの、すでに 10 年あまり経過しているので、なかなか難しいのかもしれないかな。
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