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「ネクサス」(ラメズ・ナム)

2018 年だったかの電子書籍半額セールでついあれこれ買い込んでしまったものの消化がまたひとつ終わった。上下巻になっていて文字サイズの大きさにもよるのではっきりはしないものの、おおむね印刷されたものであればそれぞれ 300 ページちょっとずつという感じの長さ。意外にも長さはさほど感じずにサクサクと読めてしまった。確かに、面白かった。

タイトルとあらすじから選定したのだと思うけれど、意外とはずれではなかったという印象。訳者のあとがきにもとくに触れられていないものの、多分に「攻殻機動隊」の影響を受けているというのはあるのではないか。電子書籍版では省略されてしまっている解説にはなにか触れられていたのかもしれないが、カットされているので知りようがない。これは、大いに不満。

ネクサスというマイクロマシンを服用することで手軽に電脳化できる技術をめぐる物語なのだが、そこで行われる電脳通信はまるっきり「攻殻機動隊」のそれといえる。あろうことか脳内でプログラム開発までできるというありさまで、そこまでいくとどうなっているのかというのはある。マイクロマシンそのものがどのようなものであるのかという詳細な記載は残念ながらない。

ただ、現状行われているこうした電脳化技術の研究の最先端情報をもとにしているというのは事実らしいし、実際そうしたニュースをいくつか目にしたこともある。おおきな事故で障害を負い、それを補う必要から電脳化、あるいは「攻殻機動隊」でいうところの義体化が実験されるのは、よりよく生きるためのひとつの明かりなのだろうとは思う。

ただ、ここまで意識同士の統合というか操作まで簡易におこなえてしまうというのは、やはりまだまだ非現実的。だからこその SF ではある。

という意味で、ちょっとお安いハリウッド映画的な物語といえる。ゆえに、これが映画化されたら、そこそこ楽しめる SF アクションサスペンスといったものになりそうだ。アクションにバイオレンスに、ちょっとお色気に、人間ドラマまで網羅している。ちょっと大風呂敷を広げすぎているきらいがないではないものの、ハリウッド映画ならそういうものと割り切れそう。

ただ、その場合結末は少し変えられるのではないかとも。ケイドとサラは別々の道を進むという最後になるけれど、ここはきっとふたりが手に手を取ってという感じになりそう。

娯楽としては十分に堪能できるので面白い。

ただ、先にも書いたけれど、訳者あとがきでも触れている解説がカットされているのが不満だ。そこを読まないとこの作品の真価に触れられないようなあとがきなのに。「読みたかったら紙を買え」というのであれば、もはや電子書籍なんて出す意味がない。

がっかりだよ、早川書房。とは、思う。まあ、今後も電子書籍で買うのは漫画だけになるだろう。このときの一時の気の迷いが悔やまれる。とはいえ、面白かったのは事実だけれどね。わざわざ紙で買いなおす気にまではなれない。

 

 

ネクサス(上) (ハヤカワ文庫SF)

 

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