「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」(小説)
2018/10 から放送のアニメを見てすっかり気に入ってしまい、のちに原作小説のほうを全巻そろえ、その後出た新刊もそろえて、まあ読んだのは 2020 年ころだったわけではあるが、今も続編を心待ちにしている作品のひとつではある。
で、このところ記録をずっとさぼっていたのを思い出したので少し過去のものも順次あげておこうかというところ。細かいところはもはや記憶の霞になろうとしているので、まとめて記録するかとも思ったけれど、諸般の事情によりひとつずつ。
アニメタイトルにもなった一作目は自身の姿が周囲の人間にしだいに認識されなくなっていることに気づいたヒロイン、桜島麻衣が、誰か自分を見ることができる人物を探そうと目立つバニーガール衣装であちこち歩きまわっていたことに起因する物語。
それに唯一気づいた咲太の秘密の一端を知ることになる麻衣と、その現象の意味を知る咲太との逃避行を経ての過激にも思える解決に、青少年ならばワクワクするだろうし、もうすっかりそんな昔のことは忘れた年寄りには、あまりにもむずがゆい感覚とうらやましさとほほえましさを混ぜ合わせ得たような複雑な思いを残していく。そんな物語。
舞台も世界も基本は今この時代、世界。けれど描かれるのはいかにも不条理な不思議な世界。そんな不釣り合いな対比を不自然に感じさせない文章と展開がなかなかうまい。
キャラクターの設定や、入念に練られたより大きな大きなプロット。その大きな渦の中に小さな渦を落とし込みつつ、着実に全体を語り進める技術。SF というべきなのか、ファンタジーというべきなのか、なかなかに難しいけれど、一流の物語というのは間違いないのではないか。もちろん好みというのはある。
TV シリーズと劇場版を使ったアニメーション展開も見事だったが、それはまた。
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