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「うつくしい繭」

二年あまり前に購入はしていたのだけれど、ようやく読んだら、意外とあっさりと短時間に読めた。文字サイズとかページ数とかもろもろみるとテキスト量としてはそう多くはなかった様子。刊行時にやたらと評判だったので気になっていたけれど、確かによい文章だったし、アイデアもなかなかに面白かった。

舞台も著者自身の経験も踏まえた東南アジア方面だったりもして、そのあたりの地の利といったものも影響して得も言われぬ雰囲気をかもしだすのに十二分に役立っていた。

SF というかちょっと不思議というファンタジー系の匂いが強いようにも思うし、現代 SF といった趣でもあって、日常のなかに SF を描き出すという感じ。

もともとなのかはたまた講座のおかげか文章はなかなかに洗練されていてするすると読み進めることができる。こういうのはなかなか難しい。摩訶不思議な奇妙奇天烈なアイデアの数々も、いかにもアジアっぽい精神性を感じる。

「里山奇譚」の中編版といった趣と思えば、さほど間違いもないか。

ただ、それだけに後味がさっぱりすぎて印象に薄いというのもある。読後にずしんと残るということはあまりない。いや、残らなくてはいけないといいうことではないので、それはそれでよい。面白かったのは事実だ。ただ、素直にいえばそれだけだったのだ。

とはいえ、不思議な物語を求めている人にとっては、まずまずのおすすめの一冊といえなくはない。

うつくしい繭

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