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「小説 君の名は。」

 夏の公開からほとんど熱狂的なブームを巻き起こしてある種熱病のようなヒットとなっているというアニメ「君の名は。」。見るのは当分先になりそうだけれど、ひとまずは小説のほうを読んでみようかということに。ゆえにアニメの展開と同じなのか、結末と同じなのかもわからない。ということを踏まえたうえでまあネタバレでもしかたないというスタンスでちょっと書いておく。

 紹介としては、やたらと高校生男女の体が入れ替わりつつ展開し、なかなか出会えない切なさが話題といったふうに言われる。実際、冒頭はそのとおりではある。寝ている間にお互いの体と心が入れ替わっていておおむね一日、つまり寝るまではその入れ替わりが続くと。といっていつでもということでもなくそのあたりは不明なままに展開する。

 この冒頭。コミカルな展開でじわじわと読者をつかみにかかっていてこのあたりはうまい。とりあえず入れ替わっていて、男が女の子の体になったらきっとこういう行動しそうだよなというある種願望のようなものが描かれる。御幣を覚悟でいえば。

 一方で女の子が男子の体になったらというとまどいがそれなりに描かれて、双方を行きつ戻りつするかのような文章構成で書かれていて、ある種実験小説的な意味合いもありそうだ。

 とにもかくにもそうしておもしろおかしい展開でぐっと物語世界にひきこんでから、がらりと展開を変えて物語の核心んにはいるとその調子はかわる。入れ替わりもなくなって、そうしていろいろみているとその入れ替わりが実は時を超えたものだったということがわかりはじめるにいたって、「おお、そうきたか!」という感じになる。

 男の時間のほうが未来であり、つまり過去においてすでに彼女は死んでいる。隕石の墜落によって。それを阻止するすべはないのかということで奔走するのが中盤。そうして、なんとか過去において村にその危機をしらせて被害を阻止しようと動き出すが、そもそもそんな奇抜なはなしを信じる理由もない。高校生、しかも女の子がなにか言ってもなにを根拠にそれを信じようというのかと思われてもしかたない。

 実際、作戦は失敗しなかなか避難しようという動きがない状況になっているところで物語は止まってしまう。次に物語がはじまるのはすでに書き換えられた世界だ。その世界では隕石の墜落による村の被害は回避され、住民の誰も死ぬことはなかった世界。最終的にどのように働きかけ、それがどう効果して被害を防いだのかというくだりが具体的に書かれることはない。

 そこは端折られてしまった。そして、平和に終わった世界だけが描かれ、少し大人びたふたりが東京でなにかにひかれるかのように再開を果たす。そんな物語。

 やはり村の危機を回避するまでの過程があまりに省略されすぎて無理がある。そこをごまかしてしまってはダメなのではないかという感じがしてしまう。そここそ重要な部分なのであって、たとえご都合主義に描こうとそこを描かずに過去の話として語るだけではだめではないかとは。

 小説版ではアニメで描けない部分まで書いているちうような話も聞いたのだけれど(あるいはそれは他のアニメ作品の小説版だったかもしれないが)、これではちょっと不十分と言われてもやむを得ないのではなかろうか。

 もちろん、そこでアニメではどう描かれたのかと気になる部分ではあるが。できれば、さらに書き直されることを期待したいかなと。

4041026229小説 君の名は。 (角川文庫)
新海 誠
KADOKAWA/メディアファクトリー 2016-06-18

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