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「ぼくらは「物理」のおかげで生きている」

 本が好き! 経由で絹本していただきました。ありがとうございます。

 数学や科学(あるいは算数と理科)など学んでなんの役に立つのか? 大人になって生活していて特に必要だったことなどない。そういうことが昔からよく言われている。実際、普段の生活のなかで、あるいは仕事のなかでそれらが明確に役立っているのかというと、そうでもないこともあるのかもしれない。ただ、実は気づいていないだけで、数学や科学が密接に関わっているということは案外多いのだ、ということもまた事実。

 そもそもこの世界は数式ですべてあらわせると数学者や物理学者は言う。自然の姿を分析して得られた知見が科学であるのだから、世界が科学でできているといっても不思議はない。だから、わたしたちの日常には科学があふれている。それが当然。

 そんな身近なところにある科学、とくに物理の役割について短く項目ごとにまとめた一冊。近年話題になっているブルーライトからはじまり、静電気やビンのフタの話。エアコンで冷房できるしくみ、タッチ式の自動改札などのしくみ。日常なにげなく使っていたあんなものやこんなところで便利に使われていた機能が、実は物理のこれこれの法則(など)によって実現されているのだ、ということをできるだけやさしくわかりやすく解説されている。SD カードなどフラッシュメモリの記録でトンネル効果が使われているというのはちょっとした驚きでもあった。

 とかく物理とか科学とかいうとそれだけで敬遠する人も多いかもしれないが、難しい理論は横において(とはいってもその概要についての解説はさけられないのだけれど)大雑把にでもその仕組みを理解してもらおうという趣旨で書かれているので素人にとっても比較的読みやすい。

 さすがに最後のほうは著者もやや無理かなという思いをかかえつつどうしても書いておきたかったというところなのかという一般相対性理論がらみとか不確定性原理とかでてくるのだが、やはりちょっと難解で判断に迷うところかも。

 それでも、日常触れる機会のあるしくみのふしぎを理解できるという意味において、物理への入門として楽しい一冊であるとはいえそうだ。

 最後にふたつの正誤情報と、ひとつの修正案を提示しておく。

■ P.52 タンカーの例では数値の単位は m なので結果も m3 でなくてはならないのに cm3 になっている。

では、タンカーはどうでしょうか。

(略)
330 x 60 x 20 = 396000cm3
1cm3の水の重さは 1 トンですので、
(P.52)


■ P.63 のボールの加速度の図は間違いと、図としてのわかりにくさがある。

63ページの上昇中・下降中のボールの速度の図

 間違いは、上昇中と下降中の左側の長い上下の矢印左に書かれた「速くなる/遅くなる」の説明が入れ違いであるということ。正しくは、

上昇中:「毎秒 9.8m/s ずつ遅くなる」

下降中:「毎秒 9.8m/s ずつ速くなる」

 P.64 に続く本文ではそのように書かれているが図の表記は間違っている。「加速度を測ってみると」ともあるが、これは「速度を測ってみると」ではないか。

 また、この図では上昇中の描き方が上から下に時間経過を示して描かれているのだが、これは上昇中というイメージと反するために今ひとつ実感としてつかみにくい図になってしまっている。これらをあわせるとこの図は以下のようにするほうがより分かりやすいのではないだろうか。

上昇中・下降中のボール速度の図(修正案)

4788911787ぼくらは「物理」のおかげで生きている (素晴らしきサイエンス) (素晴らしきサイエンスPHYSICS)
横川 淳
実務教育出版 2016-05-27

by G-Tools


 余談:
 「空が青いのはなぜか」という話もでてくるのですが、どうしても「アルドノア・ゼロ」を思い出してしまってしかたありませんでした。そこまで何度も「空が青いのは、レイリー散乱」と言わせなくてもと思っていたので。

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