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「GREY 上」

 本が好き!のヨンデミル電子書籍を献本していただきました。ありがとうございます。

 かつてクールでポップでときにコミカルなその作風で一世を風靡した「軽井沢シンドローム」。その後もさまざまな作品で活躍しながらも、それがもとで体調を崩し、漫画界から去らなくてはならなくなった、たがみよしひさ。ミステリや SF も好きだったようだけれど、記憶している限りでは SF 作品はそう多くはなかったように思う。その意味では貴重な SF 作品といえそうなのが、この「GREY」。

 恐らくは荒廃した地球で、人々は極端な格差社会にあるらしくほとんどスラムのような最底辺で生きている GREY たちが都市部で暮らそうと思うのであれば、戦士となって戦闘を繰り返し、そこで得られるポイントによってランクを上げ、いわば市民権を得るしかない。という世界。ゲームのような世界。

 ある意味非情なまでの行動でどんどんランクをあげていくグレイ。けれどその行く手は次第にストレートな道ではなく、ことによるとこの社会の闇かなにかを明らかにするのだろうかという謎の世界に引きずり込まれていってしまうというあたりの上巻。SF とはいったものの近未来的な時代設定と、メカニック類のそれを除くとさほど SF 臭はしない。むしろ、これまでの作品にもあったようなハードボイルドなアクション系の延長ととらえるほうが正しいかもしれない。

 そうであるがゆえに映画でも見ているかのように実にグイグイと引き込まれていってしまう。展開のすばやさや意外なまでにあっさりと切るものは切っていく。それでいてときおりはさむコミカルな部分も消して忘れない。くすりと思わせておいて次の場面ではしっかりとクールに決めて見せる。「軽シン」から続くお得意の展開が実に生きている感じで楽しい。もちろん多少のお色気路線も忘れてはいない。

「まだ傷口がふさがってねえんだぜ」

「だからあたしの傷口はふさいでくれないと?」

 確か続きは下巻だけかと思うのだけれど、この先どうまとめていくのか気になってしまって困る。まあ、そもそもの献本が上巻だけというのが困ったものでもあったわけではあるのだけれど、下巻が用意できたらぜひ読ませていただきたいところ。

 ちなみにはじめてヨンデミルの電子書籍献本を利用したのだけれど、まさかヨンデミルのアカウント作成から必要になるのだとは思わずにいたので、少々の嘆きを感じたのは素直なところ。また、本が好き! のアカウントでの管理画面から直接読めるようなものであればもっと手軽なのかなとは思ったりも。運営会社的には同じようなので、そのあたり改善されていくともう少し利用しやすくなるのではないかと(ヨンデミルアカウントでなく本が好き!アカウントでそのまま読めるというように)。

 余談ではあるけれど、数年前地元テレビ局でたがみよしひさが登場した。表舞台から去ってひっそりとしていた中、ひさびさのことだったらしい。いまだ漫画を描くことはできないようだったが、多少リハビリとしての手慰みに描きはじめてもいるということだった。作品を発表するにはまだまだ時間はかかりそうではあったけれど、いずれまた楽しい作品が読める日がくることを願っている。(先ごろ兄である小山田いくが亡くなってしまったので、それもまた遠のいてしまうかもしれない)

4821184699GREY (上) (ぶんか社コミック文庫)
たがみ よしひさ
ぶんか社 2007-07-19

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