「後世への最大遺物」
先月の「100 分で名著」でだったかの内村鑑三に触発されて青空文庫で読んでみた。もっとも、番組で直接にとりあげた「代表的日本人」は作業中とのことなので部分的にでてきた「後世への最大遺物」で。
で、どうやら二回にわたって行われた講演録ということらしく案外短いものだった。ポイントはそう多くなく、すべての人がなにかを残せるが、だからといってなにか大きなことを成し遂げられるわけではないのも確かであると。
では、そうした人々、最終的には本当に普通の市井の人々が残せるものというのはなんだろうか? というあたりに話は行き着く。まあ、それは確かにそうかもしれないが、そこまで自信をもてる人というのも、やはりまた少ないのかもしれないなと、自分のこととして考えてもそう思う。
ということで引用メモで記録しておく。
それでわれわれの今日の実際問題は社会問題であろうと、教会問題であろうと、青年問題であろうと、教育問題であろうとも、それを煎じつめてみれば、やはり金銭問題です。ここにいたって誰が金が不要だなぞというものがありますか。
後世への最大遺物のなかで、まず第一に大切のものは何であるかというに、私は金だというて、その金の必要を述べた。しかしながら何人も金を溜める力を持っておらない。私はこれはやはり一つの Genius(天才)ではないかと思います。
金を遺物としようと思う人には、金を溜める力とまたその金を使う力とがなくてはならぬ。この二つの考えのない人、この二つの考えについて十分に決心しない人が、金を溜めるということは、はなはだ危険のことだと思います。
なるほど『源氏物語』という本は美しい言葉を日本に伝えたものであるかも知れませぬ。しかし『源氏物語』が日本の士気を鼓舞することのために何をしたか。何もしないばかりでなくわれわれを女らしき意気地なしになした。あのような文学はわれわれのなかから根コソギに絶やしたい。
私が考えてみますに人間が後世に遺すことのできる、ソウしてこれは誰にも遺すことのできるところの遺物で、利益ばかりあって害のない遺物がある。それは何であるかならば勇ましい高尚なる生涯であると思います。
彼女は何というたかというに、彼女の女生徒にこういうた。「他の人の行くことを嫌うところへ行け。他の人の嫌がることをなせ」
これがマウント・ホリヨーク・セミナリーの立った土台石であります。
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