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「言の葉の庭」

 レビューを見ると賛美するものと相反するものとあってなるほどと。どちらも同じようなところで反対の感想を持っていたりしてそれはそれでおもしろい。どちらの言い分もわかるけれど、正直にいえば素直に見ればよいではないかというところも。というとやや反対する意見に厳しめになってしまうか。

 雨を描きたい作品だったということを黒豆さんから聞いていたのだけれど、確かにその通りではあった。冒頭から雨の描写の見事さに圧倒される。ただ、これは最近のリアルすぎるくらいの CG 技術をフルに生かした描写というのはすぐわかるし、そういう時代になったのだなといういろいろな感慨がわきあがる。そして、ひいき目でもなく素直にすごいなあと思う。

 ただ、その分その後の通常のセルアニメ(と今もいってよいのだろうか)の 2D 部分は従来の雰囲気になってしまうので、そのギャップが大きすぎて不自然になってしまっているのはどうしようもない。というか、ここまで差が出てしまうとかえって品質の低下として感じてしまうのは損だ。

 といって全編を高品質の CG テイストで描いてしまうと、おそらく作品としての価値はずいぶんと違ったものになってしまったのではないかともいえる。といって雨のシーンのリアルさが落ちるとインパクトには欠けてしまうかもしれない。難しいところ。

 物語としてはごくシンプルではあるのだけれど、最後になって突然に実は彼女が彼が通う高校の教師だったということがわかるのだが、それにしても直接教わっていないとはいえ存在くらいは知っていてもよさそうなもので、そのあたりにやや無理を感じてしまうのは当然のところではないかと。そうした些細なところがちらほらとあるがゆえに全体への印象がやや悪くなってしまうというのが全体としての欠点かもしれない。

 彼が学業よりも靴職人に情熱を注ぐとか、彼女が実に真摯であるがゆえに心無い生徒の悪巧みに心を痛めてしまうという構図や設定は物語としては王道的なところ。最後はやや無理な展開ともいえるけれど、時間的にそのあたりは仕方ないところなのかとやや許容できる。短いがゆえに描き足りない部分があまりにも多いのでそのあたりも残念なところか。

 そもそも新海誠さんの作品というのは映像の美しさを描くことに主眼があるともいえるので、物語としては陳腐であったりするのは止むを得ないところがある(と個人的には思っている)。極端なことをいえばプロモーションビデオ・環境ビデオ的な作品作りという側面がある。ゆえに全般に脚本はやや弱い。とはいえ、まったくダメということではなくて、充分にがんばっていると思うし悪くない物語だと思う。続きが見たいなと思わせるくらいには充分だ。

 万葉短歌がある意味キーとなるのだけれど、やや扱いが弱いというのも残念か。もう少しそこが広がってもよかったと思うし、そうしたこともあるので続編を期待する声というのがあるのかもしれない。とはいえ個人的には続きは有意に想像できるので、あえて作らないほうがこの作品としてはよいのではないかとも思える。余韻を台無しにしないためにも。

 全体としては絶賛というには残念なところもあるけれど、充分によい作品に仕上がってはいると思う。けなすためにけなすようなことは愚かなのでやめておきたい。ふと、万葉短歌にふれたくなる、そんな作品。

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東宝 2013-06-21

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