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「あがり」

 数年前からはじまった SF 短編の新人賞受賞作と選評をまとめたという電子書籍版がでていて、以前それを買っておいたのだけれど(価格がまあ安いので)電子書籍というのは物理的に見えないというのが災いしてそのまますっかり忘れていた。漫画ばかり読んでいるからというのもある。

 ということでようやく読んだのだった。いや、正確にはすこし読み始めていたのだけれど中断したままだったらしい。で、確かになかなかに面白かった。

 恐らくは北海道なのかという大学の研究室。とある理論を検証するために細胞の増殖を繰り返す? という実験をして一定回数を超えたところでその有効な回数にたどりついてしまい、それ以降はなにも起きなくなるのではないかといったような発想かと思うのだけれど、理解が少し違っているかもしれない。(読み返していないのであくまでも記憶の印象なので違う可能性大)

 で、実際に実験が終わったらとりまく世間でおかしな現象が立て続けにおきるという顛末がなかなかに恐ろしくもありおもしろくもある。理系でありながらカタカナ言葉を一切排除しているというのも特徴で、それがまた奇妙な世界観を描き出すのに役立っている。

 基本主人公の視点で描かれるのだが、彼女もまたなぜかその研究をしている彼が実験を終了したときに夜をともにしてしまい大学に戻って事後経口避妊薬を処方してもらったりするというちぐはぐさがあったり。なんとも不思議な感じのする世界。

 正直なところ発想のおもしろさはあるものの、それがなぜ結末にいたるのかというあたりはほとんど飛躍が大きくてそのあたりをつきつめるとちょっと違和感が残ってしまうかもしれない。それにともなう結末の展開にしても、本当にそれが役に立つのだろうかというところで物語りは終わる。

 書き直しを条件にということだったのも(といって書き直されたものを読んでいるはずではあるのだが)そのあたりの奇妙さとでもいうあたりに不満があったのかもしれない。さらりと読んだあとの感覚は非常によいのだが、いやまてよと考えはじめるとちょっと不満が残ってしまう、そんな作品かもしれない。さらに洗練されているであろうその後の作品を読んでみたいと思うところではあるので、いずれ探してみようかなと。

B007TAKKPOあがり -Sogen SF Short Story Prize Edition- 創元SF短編賞受賞作
松崎 有理 大森 望
東京創元社 2010-07-30

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 これかな。

4488745016あがり (創元SF文庫)
松崎 有理
東京創元社 2013-10-30

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