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「大尉の盟約」

 本が好き!経由で献本していただきました。ありがとうございます。

 一連のヴォルコシガンシリーズの外伝的な作品のため、マイルズ本人はほとんど登場しない。といって作品のテイストが変わるということはもちろんなくスペースオペラの面目躍如。読者大サービス月間とでもいうような内容になっている。ただ、正直なところもろもろの事件背景とかがやや不明瞭に感じてしまうのは、残念ながらシリーズの大半を読んでいないがゆえということはあるかもしれない。

 本作での主人公イワン。友人からの依頼でとある女性をくどくことになり(そのあたりの事情が結局のところよくわからないというか納得がいきにくいというか)、テユと出会うわけなのだが、住まいで待ち伏せていたところで同居しているリッシュによって昏倒されてしまう。別の何者かに狙われているということはわかるのだが、その結果として警察・司法・所属部隊方面などなどでいろいろ面倒が起きてしまい、起死回生の手段としてイワンが思いついたのがテユと結婚してしまうということだったと。

 結婚したことで身元保証がなされているイワンの庇護も手厚いということだったわけだ。とりあえず現状を切り抜けたら離婚すればいいからという偽装結婚のはずだったのに、次第に互いにひかれあってというある意味王道的な展開ではあるのだった。さらには離婚のためにと訪れたところが、正当な理由がないではないかと拒否されてしまう。離婚するって難しい。

 ただ、その後登場するテユの大家族(死んだとか行方不明とかだったらしいのだが)によって問題が面倒になっていく。そもそも持参していた書類が偽装らしく、イワンの妻の家族ということが確認されて一時的な在留が認められるというような話になってくる。彼らがその間に隠密裏に行動するそれが、どうも突飛すぎるというかで個人的にはあまり展開にはなじめない。

 そうして行動していた結果がとんでもない事態を引き起こしてしまうのが後半のクライマックス。その裁定なども正直なところどうもよくわからない展開に思えるのだが、とにかくまあ穏やかなところに落ち着く。そもそも彼らはなんだったのか? と思ってしまうのはよく読んでいないか、あるいは作品世界になじんでいないからなのか。

 いずれにしてもそうした個々の事件や事態を切り抜けていく展開そのものはスペオペとして十分に面白いし楽しめた。ただ、その間にいろいろはさまれている説明的な展開がやや退屈に感じてしまったのはある(そして、そうした部分が案外長い)。以前読んだのは「ミラー衛星衝突」だったのだけれど、そのときにはそういう感じはあまりなかった。今回が違うのか、はたまた自分の感じ方なだけなのか、それはわからない。そうしたことを踏まえたうえであえて評価すれば、やや微妙な作品だったかというところではある。

 余談ながら本作を読んでいてふと連想したのは銀河辺境シリーズのことだった。あちらも主人公は女たらしの宇宙軍人さんというところで、冒険と色で描かれたスペオペシリーズとして大部をなした名作なのだった。もっともあちらのほうが一作あたりの分量的も半分以下ということで、いわば無駄を省いたコンパクトなサイズで読みやすかったようには思う。このシリーズはやや冗長すぎる嫌いがあるのかもしれない。


以下、校正もれかと思われる箇所。

「あら。そうよね」テユは動揺しだ

(上:P.37)

それはともかく、たったいまイワンが見た小キッチンのカウンターに載っているのものは・・・・・・。

(上:P.168)

「くそっ」とイワン。「それじゃあ連中は壁のなかのどこからからでも出てこられるんだな」

(下:P.95)

4488698190大尉の盟約〈上〉 (創元SF文庫)
ロイス・マクマスター・ビジョルド 小木曽 絢子
東京創元社 2015-09-19

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4488698204大尉の盟約〈下〉 (創元SF文庫)
ロイス・マクマスター・ビジョルド 小木曽 絢子
東京創元社 2015-09-19

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