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「鍵泥棒のメソッド」

 冴えない役者。お金もなく、もう死ぬしかないかと思いつつも死に切れない。最後に銭湯でもいくかといったら、せっけんで足を滑らせて倒れてしまう男に遭遇。実はこの男、スーツをビシッと決め込んでいて金もかなり持っていそう。で、つい出来心でロッカーの鍵を交換してしまう。その男になりすましてみたところなにやら怪しい男たちと関係を持たざるをえないことに。

 せっけんで転んだ男。救急搬送されて病院にはいるが幸いさほどの怪我もなく済む。ただ、一時的に記憶をなくしてしまった。自分が誰なのか、何をしているのかなどまったく思い出せない。実は、とある依頼を受けてある男の”始末”を請負、まさに仕事をすませたところで銭湯によったのだった。

 外傷もこれといってなく、手荷物(実は役者のそれだが)から名前や住所がわかり、そこに帰ることになるのだが、道をたずねるということで病院の玄関前で声をかけたのがちょっと変わった凄腕の編集者の女性。仕事はできるが、どうも奇妙なところがあって、なにごともきっちりと計画をたてないと気がすまないうえに、計画を立てればどんなことでもその通りに運ぶと思っているような節がある。

 事実、急に結婚を宣言するが、相手はこれから見つけるという。そこで社内の部下に適当な男性がいたら紹介して欲しいと依頼する始末。顔はあまり気にしないが性格的なところが重要だと。一ヶ月くらいの恋愛期間を持ってから二ヵ月後くらいに結婚式をあげるというような計画を立てていて、Xデーまでスケジュール(仮)が組まれている。

 役者の家に戻ったところでなんとなく気になってしまう彼女はなにかと様子を見たり、手伝ったりし、いつしかそれはデートのようになっていく。もともと記憶を失った男は几帳面だったので、そもそもだらしなかった役者の男のぐちゃぐちゃだった部屋もいつしか小奇麗な部屋に変貌する。

 で、そこに件の仕事を依頼した怪しい男たちがからんできて、入れ替わってしまった男たちの運命がぐるぐると翻弄されて、さあどうなるのだという展開はなんともワクワクさせてくれる面白さ。いよいよ行き詰るかというあたりで、音楽をきっかけに男の記憶が戻る。さあ、ここから物語の回収がはじまる。

 そもそも男は殺し屋などではなく、あくまでも何でも屋でしかなかった。依頼のあった男は殺害したということにして遠く沖縄でバカンス。こうして一世一代の大芝居を三者三様で打つのだが、果たして? という物語。

 さすがに最後はちょっと無理があるような展開になってしまい、「アフター・スクール」のような気持ちよさはないのだけれど、そのあたりを我慢してしまえば十二分に展開を楽しめる。最後はもう少しスマートな感じの演出でよかったのではないかとも思うが、まあそれはそれか。

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コメント

>なにごともきっちりと計画をたてないと気がすまない

アスペルガーですかね…なんて思ってしまう当事者(^^;

今時「銭湯」ってのがいいですね。

投稿: のら猫 | 2015.11.03 04:29

現実的なところだとそんな解釈かもしれませんね(^^;
描かれ方としてはどちらかというと潔癖症みたいなお堅いお嬢様みたいな感じでしょうか?
いろいろなかなか楽しい映画でした(^^)

投稿: ムムリク | 2015.11.03 09:08

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