「プレステージ」
19 世紀末のロンドン。若きマジシャンであるアンジャーとボーデンのふたりは同じ師匠の助手として活動していた。同じく助手をつとめていたアンジャーの妻が水槽脱出マジックに失敗して死亡。手首をしばったボーデンの縛り方が悪かったためにほどくことができずに死んだものと思われた。以来、ふたりは別々に行動するようになりアンジャーは妻の復讐を果たしたいという思いにとりつかれるようになる。
ボーデンはその後愛する女性と出会い娘をもうけ幸せに過ごしているようだった。拳銃の弾を受け止めるといった危険なマジックで客を魅了しようとする。が、危険なマジックはしてほしくない妻のこともあって次第に拳銃マジックは封印しようかと思い始める。そんなときに拳銃をうつ客になったのが変装していたアンジャーで、事故がおきる。ボーデンは左手指を失う。
ボーデンが次に見せたのは瞬間移動マジック。部隊の一方の端から他方にむけてゴムボールをはずませてから扉にはいると、すぐさま他方の端にある扉から現れてゴムボールをつかむ。それを見たアンジャーはこのタネを考えてくれとタネを考案するタッカーにせまる。替え玉を使っているのさと答えるタッカーにアンジャーは納得しない。助手となっている女性も手の怪我のあとを見れば間違いなく同一人物だと答える。
しかし、結局タッカーの言うとおりに替え玉となるそっくりな人物を見つけてきてマジックを行う。役者であるのはよかったが酒びたりで次第にマジックに不安が漂いはじめる。そうしてとうとうマジックのさなかに床下に落下したさい、用意していたはずのクッションがなくアンジャーは足を怪我してしまう。以降マジックからは忘れられたような存在になってしまう。
ボーデンのマジックの秘密を解くべく彼の日誌を手にいれ、ボーデンを脅迫するようにして暗号のキーを手に入れて解読していく。それによればテスラという電気研究者のつくる装置が関係しているらしいとわかるが、実はそれは本質ではなかったと最後にはわかる。テスラが研究していたのは物質転送装置。ここからにわかに SF 臭が漂いはじめてしまう。
結果、アンジャーはこの装置を手に入れ(物質を転送する装置!)100 回限定で最後のマジックショーを行う。舞台の彼に装置の電気がビリビリと放射されると姿が消え、次の瞬間、彼は観客席の後部に姿を現す。そして毎夜ひそかに巨大な荷物が運び出される。
ボーデンはアンジャーの仕業などもあってその間に妻を自殺によって失っており、アンジャーに仕返しするつもりで舞台装置を確かめる観客としてあがり、実は自分は助手だといつわって舞台の下に行くと、はたしてアンジャーが舞台から下におちてきたところ。そこにはかつてアンジャーの妻が事故でなくなったのと同じ水槽がおかれており、彼はそこにすっぽりとおちてしまう。落ちるとともに自動的にフタがしまり鍵がかかる構造も同じ。彼は出ることができない。あわてて水槽を割ろうとするボーデンだが、間に合わずアンジャーは死亡。それによってボーデンは殺人罪で起訴され有罪判決を受けてしまう。
実は冒頭がその場面で、そこから遡るようにして物語が描かれるのだが、ときおり現在に戻ってきてどうもその違いがわかりにくい。現在なのか過去なのか。そうしてとうとう死刑が失効される前に残されたひとり娘をとあるマジック好きの男がひきとるかわりにマジックのタネをすべて教えろというのだった。最後に娘とともに面会にやってきたその男はまぎれもないアンジャーその人だった。では、あの死んでいったアンジャーは誰だったのか。自分が見殺しにしてしまったと思っていたアンジャーはだれなのか。しかし、ボーデンはもはや逃れるすべを持たない。
この先、ラストの本当の意味でのタネはわかる人にはわかるけれど、それを明かしてしまうのはまあ控えたほうがよいか。一方のそれは、まあそういうことだったのだろうとわかるし、けれどもそこまでしてやっていたのかというマジシャンの矜持というかには狂気じみたものまで感じてしまう。げに恐ろしきはマジシャンの性。
時間軸の前後がわかりにくい描き方があるのでそのあたりが少々難なのだけれど、総じてドキドキしながらつい見てしまうという醍醐味にはあふれている。できれば最後を SF にしてしまうのは勘弁して欲しかったとは思うけれど。
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