原爆の非道はただしく世界に知らしめられたい
原爆投下直後に撮影された写真があったという話。終戦後 GHQ が写真を探し出しては次々と没収していたために、写真の存在に気づけずに長らくいたというのだった。撮影したのは地元新聞社のカメラマンらしく、敗色濃い写真は撮影することを許されていなかったという時代にそむき、これはどうしても撮影しなくてはということで赴いて撮影したものの、二枚を撮影したところで続けることができなかったという。それほど凄惨な光景であったと。
表に出るきっかけになったのは雑誌 TIME に掲載されたことだとか。それすらもながらく実現できずに(つまりアメリカ政府がそうした報道に規制をかけていた。原爆は正当な兵器であり、それによってどのような被害をもたらしたのかという事実を公表することをさせなかったから。それをすると核兵器開発に支障をもたらすと)いて、ようやく世に出すことができたのが終戦から 7 年の後だったとか。
モノクロのその写真でも人々の異様な姿が見て取れるわけで、そこに写っている生存者に話を聞くことや、写ってはいないものの現場にいたという人に話を聞いたりして、そこでなにが起きていたのかを読み解いていた。
ちょうどその御幸橋のあたりが境界にあたる地点で、爆心地に近い場所からみな逃げてきたようだった。けれど誰も彼もが猛烈な熱でやけどを負い、爆風で体を傷つけられ、ようやくたどりついた。やけどに油をぬろうということで集まってもいたようだと分析。けれど、ちょっと触っただけで皮膚全体がズルッとむけてしまうほどの状態。もはや人のなす行為とは思えない。原爆のもたらす非道の現場。
アメリカではいまだ原爆は正当な手段だったと譲らない。終戦後原爆がもたらした影響(効果)を調べていたが、それは秘密とされ、一般にはあまり知らされないまま。無辜の市民の頭上で爆発させあっというまに多くの市民を焼き尽くし、人の姿とは思えない姿にかえてしまいながら、なんの恥じもいだかないとしたら、まさに鬼畜米英という言葉にいつわりなしということになってしまいそうだ。少なくとも米に関しては。
こうした番組はもっともっと広く世界に配信するべきではないのかと。オンデマンドで有料でなどといわず、広く世界の人に見てもらうべきではないのか。原爆というものがいかに非人道的なものであったのか、それをわかっていてアメリカはひた隠しにしてきたという歴史についても。
勝ったものはどんな非道をしてもそれは正義であって、負けたものはそれがどのようなものでも甘んじて受け続けるべきだという論理は、やはり少しおかしい。たとえどのような立場にあっても非は非として認める勇気がなければ、人として失格なのではないかと。
ただ、この番組。証言をもとに写真を CG 動画にしてみせているのが余計なこと。不自然な動きをさせて台詞までいわせていたりするのはせっかくの内容を貶めてしまっている。いったいそれが何の意味を持つのかと。あえて動画にまでするようなことではない。死者を冒涜するかのような行為に見えてしまって嫌だった。
とはいえ、総じていえば貴重な証言であり、写真であり、きちんとその事実だけは世界にしらしめる意義があるとは思ったのだった。
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