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星ぼしの荒野から

 本のダンボール箱を見ていてふと再読する気になった。といっても正直 20 年あまりも前のことで覚えていないというのが正しい。再読してみて当時としてはそれで仕方ないのかもと思いつつ読み終えた。どれも、それでどうというのだろう? というような読後感を持ってしまう作品が多かった。

 いや、それは作品がダメとかそういう話ではなくて、物語としてはまあわかった。そして全編を流れるフェミニズムな空気というものもよくわかった。ただ、それぞれの物語が描くものが、で、いったいなんなのだろう? と思ってしまうようなちょっとあいまいな内容なのだった。

 伊藤典夫さんの解説を読むと作品はティプトリーの素性が判明した時期前後ということだったり、ラクーナ・シェルドン名義で書かれたものとティプトリー名義のものとが混在する時代だったのだという意味で特殊な時期に編まれた作品集だったと知ると、少し腑に落ちるものもある。

 全般にやさしい感じの語り口であるというのもうなずける。「愛はさだめ、さだめは死」のようなガチガチした感じはあまりない。星をめざすような物語が多いというのも、読後に言われてみると確かにそうかと思う。

 それでも表題作の「星ぼしの荒野から」にしても、最後の「たおやかな狂える手に」にしても、それ以前の大半にしても、内容は一応わかったが、で、いったいこれはなんなのだ? という疑問が残ってしまうのだった。いや、理由とかない。そういうものなのだ。それ以上でもそれ以下でもない。と言うかもしれない。

 そう思うと昔読んだときに(1999 年の初版で買っているらしい)あまり印象に残っていないのもわかるような気がする。

 ただひとつ「ラセンウジバエ解決法」については、SF らしいゾクゾクとする寒気を感じる作品だったというのは鮮烈な記憶となりそうだった。研究者が家族のもとに帰ろうとするのだが、途中無性に妻を殺してしまうような衝動や夢にとりつかれてしまう。ちょうど世界では今そうした異常な事態が増えている。家路についてはいるのだが、このままでは妻を殺害してしまいそうだと電話をかけ、たとえ自分が帰宅しても家にいれてはいけない。逃げるんだと妻につたえる。愛しているのひとことも忘れずに。

 世界中で女狩りがはじまっているという状況で、これはつまりと気がつくのがラセンウジバエ解決法。現存するハエらしいのだが、この駆除のためにメスを殺してしまう、つまり繁殖を阻止するという方法をとるらしい。すなわちこれは人類を抹殺するために行われているある計画なのではないかと。

 まあ、大雑把にいってしまうとそういう物語なのだけれど、なんとも背筋の寒くなるような小品。タイトルだけは妙に印象に残っていて記憶にあったのだけれど、今回再読して実にとんでもない話だったのだなとあらてめて思った。もう少し再読してみるかと。(「たったひとつの冴えたやりかた」は実は大嫌いである)

4150112673星ぼしの荒野から (ハヤカワ文庫SF)
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア Jr. Tiptree James
早川書房 1999-04

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4150107300愛はさだめ、さだめは死 (ハヤカワ文庫SF)
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア 浅倉 久志
早川書房 1987-08

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