「完全なる脱獄」
どうやら現在進行形(作品発表時)の実話をもとにした映画ということらしい。重大な殺人の罪で投獄されているのだが、何度もなんども脱獄を繰り返すカイーネクという囚人。ただ、どうもその裁判は奇妙な感じがあって、あまりにもはじめから彼を犯人として終結させることに終始していた節があるらしい。
若い女性弁護士がそれを調べて、いくつかの証言や証拠を得て、再審に持ちかけるのだけれど、かなり有効な証拠が提示されたかに見えたのに、裁判官はにべもなく再審を却下。その後も脱獄を続けるは、女弁護士も危険な目にあうわ、これ以上事件を探ると命はないぞといわんばかり。
実は彼女は一連の事件で無残にも殺害された女性の妹だか娘だかで、当時も命の危険にさらされながらかろうじて生き延びた当人だったと最後のほうで明かされる。それがゆえに、カイーネクが犯人ではないという確信(少なくとも自分の姉なりが殺されたのは別のやつらにより仕業とわかっている)があると。それが事件を調べ続ける理由のひとつでもあるらしいと。
ただ、物語は結局またつかまってしまうというあたりで終わり。実際現在も投獄されていて、再審へのさらなる運動が続けられているらしい旨が示されて終わるという内容。もちろん、それが実際のことなのかどうかを調べるすべは、海外の観客においてはそうはないので、そのままに受け止めてよいものかどうかは判断しかねるところも。
とはいえ、邦題の「完全なる脱獄」というのはなんともいただけない。そういう映画ではないのだし。「大脱走」みたいなものでもない。確かにいろいろ計略によって脱走をはかることは事実だけれど、そういう映画ではないし、そこはむしろあっさりしているともいえるわけで。素直に原題通りに「カイーネク」としておいてよかったのではなかろうか、とは。
まあ、ドキュメンタリーみたいなものだから、結論もないし、テーマがあるというわけでもない。それだけに終わってしまう作品でもあり、どう評価したらよいのだろうねというのが正直なところ。社会の腐敗はどんな国においても、いつの時代においても存在するのであろうなとは。
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