「カラスの親指」
正直あまり期待はなく見始めた。冒頭の展開にやや出来すぎかと思いつつも、なかなか面白く見た。
かつて止む無く悪の手先とならざるを得ずに間接的とはいえある女性を死なせてしまったことを後悔しつつ、その組織の裏帳簿を警察に渡すことで一応は引導を渡したはずだったのだけれど、さすがにその復讐の陰におびえつつ住居を転々としながら詐欺師として暮らしていると。
相棒とともに仕事をしている今、ふとしたことで若い女のスリを助けることになり、どうしたことかアパートを追い出されるというその女の子が気がつけば彼らの住居に上がりこんでしまう。遊び人という体の姉とその彼氏を伴って。その不思議さがそもそも変ではある。
そうこうしているうちにかつて警察に逮捕されたやつらの執拗な嫌がらせがエスカレートをはじめたようで、いよいよ対決するしかないということになる。そこで大芝居を打ってやつらの金をせしめようとするのだけれど、結局予定が少し変わってしまい、妙な具合ながらとりあえずうまくはいくらしい。
が、その金は奪ってどうするのだというか、それだけではなんの解決にもなっていないはずなのだ。とか、実はそもそも居候としてやってきてしまった若い姉妹こそ、彼がかつて死にいたらしめてしまった女性の子供であったのだと途中わかるのだが、さらには彼がずっと彼女たちに匿名で仕送りをしていたこともわかったりする。どうやってその住所を知ったのだ? とか、いや、そもそもそれがわかっていたならば彼女たちの現在についてわかっていてもよかったのではないか? とか、細かなところが目に付いてきてしまう。
金を山分けしてそれぞれに分かれてしまうわけなのだが、そんなある日に彼のところに姉妹から手紙が届くと。どうやって今の住所がわかったのだ、お互いに? とか。そうして、そのあたりからどうも妙な具合になってくる。実はそこからがこの物語の種明かしであって本領になるわけだ。
なるほどそういう裏で物語が展開されていたのかと思うと、いくつかの不思議や都合のよさは解消される。そのあたりの伏線の生かし方はなかなかうまいし、面白い。もっとも、その他のいくつかについてはそれでもどうなのだ? と都合よすぎるだろうと思えなくもないのだけれど。
とはいえ、まあそのあたりの細かいことは置いておけば十分やられた感も味わえるし、楽しい映画ではあるのだった。種明かし部分のためもあって時間が長いのがちょっと大変だけれど、見終わったあとの爽快感や満足感は悪くない。
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