ラスト・ターゲット
なにが起きていて、主人公はどういう事情で、裏でなにがあって、でどうなろうとしているのか。といった設定そのものから話そのものまでなんだかよくわからないままに雰囲気で済ませてしまう。そんな映画。
ジョージ・クルーニー演じる男はどうやら殺し屋らしいというのはわかる。で、次の仕事は連絡を待てとかいわれて与えられた携帯電話を持って車で田舎町へやってくる。が、携帯電話では居場所の足がつきやすいという不安からか途中で投げ捨ててしまう。よって公衆電話からボスというか連絡役なのか(そのあたりの関係もよくはわからない)に連絡を取る。
依頼があるというのでいくと待っていたのは女で、狙撃用のコンパクトだが威力がありというようなライフルを一丁仕上げて欲しいというのだった。依頼を受けて銃やパーツを用意してホテルの部屋で加工していく。その間に商売女と親密な関係になっていく。
そんなこんなで依頼の品を渡すという段になると、どうも自分が狙われているのだなという気配を感じていて、何度か命を狙われる。なぜ、居場所がわかったのだと。結局銃を依頼し女が狙っていたのはクルーニー演じる男であって、自分を殺すための銃を作らされていたらしいことが最後にわかる。が、誰がそれを指示したのかとかはよくわからない。例のボスらしき男がその女に命じた風にも見えるのだが、なぜか狙撃しようとしたところでその女を殺してしまうからだ。
にもかかわらずその後クルーニー演じる男を執拗においかけて殺害しようとして、結局殺されてしまう。最終的にはクルーニー演じる男も撃たれていて意識が朦朧としながらも商売女と約束の場所で落ち合おうとして車を運転していくのだった。
というような話なのだが、本当にいったいなんなの? という感じなのだった。監督がもともとカメラマンらしく、物語というよりは映像としてなにかを作りたいだけのような感じ。映像はたしかにそれなりに美しい感じではある。ただ物語りはそっちのけというところがあって、そもそもなぜ狙われるのかとかは一切説明もないし、いやそもそも設定すらされていないのではないかと。
見ず知らずの街にやってきて、たまたまであった神父が男の素性をなにからなにまで見透かしているような言動が続くのも出来すぎであるし。
いってみればイメージとしてこんな映像を作ろうというものを書き出しておいて、それをつなげてみましたというだけなのでは。
邦題はやや譲歩的なタイトルで「ラスト・ターゲット」となっているが、つまりは最後の仕事のターゲットは自分自身だったという意味と、引退しようとしていた最後の仕事の相手としての意味と。まあ、わかりやすいといえばいえるけれど、全体の物語からするとそれもやや不十分な感じ。まして原題の「アメリカ人」ではどうにもならない。
映像美をいう評もあるようだけれど、かならずしもそこまで美しいとはいえないと個人的には感じてしまう。舞台となった街の風景はたしかに美しいのだけれど。
というなんだか唖然とするしかないような映画なのだった。
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