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阪急電車

 テレビで映画は見ていて、よいなとは思っていたのだった。毎日隣に住んでいる人でさえ、その家庭がどんな暮らしをして、会話をし、何を考えているのかなどということはほとんどわからない。ましてたまたま同じ列車に乗り合わせただけの見ず知らずの他人が、どこからどこへ向かおうとしており、何のためであるのかや、なにを考えているのかなどわかろうはずもない。乗り合わせている人の数だけ物語が確実に存在しているのに、誰もそれを知ることはまずない。そこに目をつけたというのがまず面白い。

 それぞれに描かれるのは実に些細な物語であったりする。寝取られ翔子さんの物語ばかりは少し重いものを感じるかもしれないけれど、それすらも沿線のもつゆったりとした暖かさで決して重過ぎない。

 その多くは老若の女性が主人公であるといえるのはひとつの特徴かもしれない。男性が首としてでてくるのは若者の恋愛物語での相手くらいだ。小学生からおばあちゃんまで、それぞれが悩みや迷いを抱えていたりして、そのお互いが少しずつ次の誰かに影響しながら物語がつながって行く様が、路線の進み具合とともに描かれるという物語の構造もまた面白い。

 「人の縁とはふしぎなもので」ということばを地で描いたような物語たち。どこか悲愴に感じられそうな物語もきちんと最後は明るさをもたらす展開も読後をさわやかにする。

 恋がはじまった二組をはじめとした会話にも、相変わらずの有川節が満載で楽しいやらほほえましいやら。実に気持ちの良い小編であるなあと(連作短編集といったところ)。

 もっとも映画を先に見てしまったがために、翔子さんが中谷美紀に見えて仕方なかったという面はあるものの、似合っているのでむしろよしということで。他の人が誰だったのか思い出せないという老害はまた見るきっかけということにしておこう。

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