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シルエトクの熊

 NHK スペシャルで知床のヒグマの親子を追った記録を見る。北海道とかいうとついというのはある。実のところあまり気にすることなく見ていたのだけれど特別な許可を得て車で乗り付けたという時点で気がつくべきであった。そうか、知床大橋のその向こうであったかと。地図を見ると確かにその先にルシャ川があり、そのあたりまでは一応道がある。

 知床半島の道はオホーツク海側となるウトロ側では基本的に知床大橋までしか行けない。確か、バスでもそこまではいけたように記憶している(昔のはなしだ)。その先はゲートがしまっているので歩いて行こうと思えばいけなくはないが、なにかあっても知らんぞという世界だ。

 一方太平洋側になる羅臼側ではそこまで道は続いておらず、羅臼の町中を少し過ぎたあたりがせいぜいで道は終わる。

 今はどうか知らないが、かつては強の者が海岸線を延々と歩いて知床灯台のある岬突端まで行ったとか行かないとかいう話しもあったものだった。ただ、そこは人跡未踏の場所であり、そうそう歩けるような場所ではないというのは海から岬へといってみるだけでもよくわかる。ただの噂でしかなかったのかもしれないし、もしも実行した者があったとすれば警察のお世話になるような事案になってしまうのではなかったか。

 とまあそれは余談で。そのルシャ川周辺は母子の熊が餌をとったりするのに便利で多くいるという場所らしい。そこで見つけた個体識別のしやすい親子を 4 年にわたって観察した記録なのだった。

 ただ、餌の不足のためなのか異様なまでにやせ衰えてしまった姿であったり、本来は 2 年で独り立ちして山にはいって暮らすはずのオスがさらにもう一年母熊と一緒にいたりと、どうやら簡単にはいかない事情というのもあるらしかった。

 先に独り立ちしたオス熊のほうがまだ若いということで森の中での居場所を作れずに羅臼の里に出没するようになってしまい、結果捕殺。後に残ったもう一匹のオスもウトロ側に出没するようになってしまい、知床財団の人が賢明に追い払おうとしたものの、たびたび姿を現すこととなり、やむなく捕殺。

 ルシャ川近辺で一番の力を持っていたという老練なオスでオレンジと名づけられた個体もやがて老いとともに居場所を失い、ウトロの町にほど近い場所で確認されたということに財団の人が驚かれていた。映像で見る限りにおいていえばその場所はウトロから東に向かい川を渡るにしたがって上へとあがり、ぐっと右に折れていくあのあたり。ちょうどウトロが見える最後のあたり。その手前の川ということかと思った。

 そこまでくるのはかつてないというような表現だったが、しかしそれはそうなのか? とも思った。そこからほどなく知床横断道路から分かれて左。知床五湖へと向かうすぐ左手にウトロ灯台がある。数キロと離れているわけではないが、そこでも過去においてヒグマの親子などが出没しているのはよく知られていることで、さほど離れていない里まで来るのはそう不思議ではないのだろうなという印象はある。

 過去に目撃談があって入場が制限されたりした五湖はさらにさらに東だ。少なくとも 30 年あまり前には十分にウトロ灯台あたりでも熊は頻繁に目撃されていたので、決してありえないような状況ではないだろうなとは。

 このごろ長野市内でも熊による被害がでた。

 [ 信濃毎日新聞[信毎web] 長野で熊に襲われ男性大けが 果樹畑内、わなから逃げ出す ]

 長野市街地も周囲はすべて山であるし、そのどこにも熊(ツキノワグマ)がいるといわれるし目撃談は昔から数知れない。山が森が続いていれば熊はやってくる。そういうものだから知床だけ別という話ではないだろうなと。

 そういう意味ではやや不思議な感じももちつつ見たのは事実だった。それだけ知床の森は豊かでこれまでそうそうは里にやってくることがなかった、ということでもあるのかもしれないが。とはいえかなり近くまで出没していた事実を財団の方が知らないわけもないであろうし。(あるいは、このあたりは NHK 的な演出なのかもしれない)

 そうして若くして命を失う熊がいる中でも、また新しい命が生まれているというところで番組は終わりなので、まあそうして命はつながれていくというようなことなのか。

 自然とは、野生とは、そういうものだよねと。オロンコ岩からの変わらぬ風景を思い起こしながら思ったのだった。

#ホテル地の涯でお会いした IBM の方はもう退職されてしまっているのだろうなあ。お元気かしらん。名前も忘れてしまったけれど。

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