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88ミニッツ

 異常犯罪の分析医として著名で講義も受け持っているジャック。ある朝授業にでかけると途中で携帯電話に着信。「お前に残された時間は 88 分だ」と告げる。いたずらかなにかと無視しているが、授業のさなかにも電話はなるし、残り時間を告げてくる。

 しばらくするとどうやら爆弾がしかけられたらしいという連絡がきて学生や関係者はみな外にでていく、もやもやしたまま教室に残っているとなぜかスクリーンにもメッセージが表示される。生徒の中に犯人がいたのか? あの生徒か? この生徒か? 次第に疑心暗鬼に陥っていく。

 おりしもその日は以前裁判で有罪が言い渡された犯人に死刑執行が予定されている日。裁判では彼の診断と唯一の目撃者で被害者の姉の証言が決めてとなったが、犯人はそれを最後まで不服としていた。きょうにいたってテレビ局はインタビューを特別に放送したりして、自分は無実であり、いかにしてジャックにはめられたのかを切々と訴える。あるいは彼がこの嫌がらせの犯人なのか? しかし、死刑執行を待つ身の彼にそんなことができようはずもない。

 そうこうしているうちに周辺の生徒や自分自身にもつぎつぎと災厄がふりかかる。死刑囚の手口そっくりの奇妙な殺人事件も起きていく。それらすべてがジャックに関係するかのようで、警察も次第にジャックがこの事件の犯人ではないのかという疑いを持つようにもなる。そうして裁判所は死刑執行を一時中止する決定を出す。

 ジャックの周辺に現れては消えていく数人の美しい女性たち。彼女らの誰もがなんらかの事情を知っていそうでもあり、そうでないようでもあり。また、殺人の手口からすればそれは男子生徒の手によるのではないかとも思われ、行く先々でなぜか現れる彼らの行動もどうにも怪しく見えてくる。そうして、誰よりもやはり怪しいのは執行を中止された死刑囚の男。

 ほぼリアルな感じで残り時間の 88 分が過ぎていき、次第に事件の真相はみえるのだろうかと思うころ、ジャック自身の口からなぜ犯人が 88 分という時間にこだわるのかの理由が明かされる。かつてジャックの妹が異常者に殺害されたときに、その殺害手口に要した時間、それが 88 分だった。

 緊迫のなかで生徒や関係者女性がとらわれ、命の危険にさらされる終盤。やや唐突な感じの犯人像はちょっと説明不十分。時間的なものもあってかそのままになってしまうが、むしろあとから話の辻褄がよく理解できるようにはなるのだけれど、流れのなかではこちら側にはいささかわかりにくいのは難かも。

 とはいえ、緊張を保ちつつ飽きさせないような展開と、全体としたら必要十分なところでまとめた時間配分で、最後のさいごまでドキドキハラハラさせられるなかなか極上のサスペンス映画になっているのではないかなと。ジャックを演じるアルパチーノもよいし、なにより脇に置かれた女優陣がこれまたなかなか素敵なのだった。

B00179DD0W88(エイティーエイト)ミニッツ [DVD]
2008-07-11

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