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フェア・ゲーム

 そういえばそんな話があったようなとおぼろげに覚えているだけだったので、最後になってそうか実話だったかと思ってもういちど恐怖したのだった。

 9.11 テロのあとにブッシュによって始められたアメリカ・イラク戦争。大量破壊兵器が隠されていると喧伝されてその正当性を主張してはじめたものの一向に気配はなく、結果的になかったということでなんとなく尻すぼみで終わっていった戦争。大儀はなんだったのだろうと思う戦争だった。日本も資金面とかで相当援助したわけでもあるし、アメリカが言うのだから大量破壊兵器はあるのだ的な発言があったやに。

 後に言われていたなと思い出したけれど、そもそもなにやら不穏な動きはあるので CIA を通じて(というかその関係でというか)調査した結果、そういう動きではないという調査結果だったにもかかわらず、なぜか正反対の報告書が大統領に上げられて戦争勃発につながると。どうしても存在することにして戦争したくてしようがない連中が事実を捻じ曲げたということらしいのだが、その調査にあたったのが CIA 捜査官を妻に持つ元ニジェール大使。信頼篤い人物だけにその調査結果は十分に評価に値するものだったにもかかわらず、それはあくまでも形だけのものでしかなく、はなから存在するという報告書を作るつもりで画策していた者たちによるつじつまあわせのようなものだったらしい。

 新聞投稿を通じて事の真相を暴露する元大使に対して大統領がおとなしくしているはずもなく、マスコミを通じて元大使の妻は CIA の捜査官であると暴露。捜査官としての生命はそこで絶たれてしまうと。関連するすべての作戦が中止。実質的に CIA を追われることになってしまうと。夫妻には抗議や嫌がらせ、命の危険にもみまわれたりするという事態に。幼い子供は妻の実家に避難させるものの、夫妻をおとしめる手は一向に収まる気配もなく。孤立無援の戦いを続けるのか、負けを認めるのか。

 最終的にはほころびから元大使が真実を語っており、事実報告書はねじまげられていたのだと証明されて、一気に形勢は逆転。映画の最後には実際に公聴会で証言する妻の映像が流れたりする。

 アメリカって怖いね。と言える時代はもう終わったかもしれない。秘密保護法であるとか、戦争できる国にするもんねとかやたらときな臭い話題にことかかない日本。自民党は本当に日本をわが手に取り戻しつつある。国家という巨大な闇の組織に対して個人のなんと弱いことか。そら恐ろしいものを感じても思い過ごしと言っていられるのかどうか。

 もちろん映画として成り立つには脚色されている部分も少なからずあるだろうとは思うものの、そういう世界の存在としての意義は少なくないなと。あらためて見ておく価値があるのかもしれないと思ったのだった。つまり、まあ面白かった。

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