ワープする宇宙 5次元時空の謎を解く
単行本が出版された当時、ちょうど NHK の番組を見たりしたのもあって是非読みたいと思いつつ、時間がたつとその存在を忘れてしまうという都合のよい病を発症し今頃になってしまった。しかも、ソニーの Reader Store からの電子図書券とかをもらったことを契機に、どうせなら使っておくかと見ていたところ、折りよく半額くらいの値段になっていて「これは買うしかあるまい」となかば勢いで買ってしまったのだった。
ではどうだったかというと、正直にいってよくわからなかったとしか言えない。うたい文句としては「数式を使わずに解説された良書」ということなのだけれど、それだけに延々と文字だけで解説されてしまうので逆によくわからないという感じがする。
加えて理論そのものの解説よりも、それがどのように誕生したのかといった周辺情報が案外多かったり、それとの自身のかかわりなどが入ってきたりでどうもぼやけた感じがしてしまう。難解な言葉がでてくるのは仕方ないし、それはそれなのだが、いっそもう少しそのあたりも噛み砕いた表現にしてくれたらよかったのではないかとは思う。
全体のほとんどは基礎理論物理学の諸論理 理論 の解説。相対論、素粒子論、そしてひも理論へと解説が進むのでテーマである次元の話は冒頭の部分と末尾のあたりだけなので、そういう意味では前説が長くてというところも。とはいえ専門家に話すのではない以上はその前説は必要ではあるのでなんとも難しいところ。
そもそもそれぞれの話だけで一冊の本が十分に(いや十分すぎるほど)書けるのだから無理もない。
で、ごく簡単に言うと、つまり「わたしたちが暮らしているこの宇宙は 4 次元時空ではなく、5 次元時空かもしれない」という話。あるいは、もっと多い 10 や 11 次元時空なのかもしれないと。
なぜそうなのかといえば、重力、電磁気力、弱い力、強い力のこの世界を作る 4 つの力のうち、なぜか重力だけが異様に小さいことを説明するには、上位次元の中に存在する 4 次元時空だからと考えると説明がつきやすいからということらしい。すなわち重力だけは外の時空を含む世界全体に影響しているのだが、それゆえにこの時空内では力が弱くなってしまうということらしい。(まだよく理解できてない)
で、このあたりの雰囲気はアボットの「二次元の世界」などを読んでいるとなるほどと思えるところもある。4 次元時空(あるいは 3 次元空間)に生活するわたしたちにとってなぜそれ以上の次元を想像することがなかなか困難なのか。けれども、 2 次元や 1 次元は容易に見ることができるし理解することができる(見るといってもそういう世界が存在しているというわけでは必ずしもないけれど)。
2 次元空間世界に 3 次元空間の物体がやってきて通過したとしても、そこでは 2 次元の物体としてしか認識できないので、それ以上のものとして理解することが困難であると。(あー、やはり文字だけで説明するとなんだか意味不明になりそうだ)
いずれにしても重力だけが極端に弱いという理由を説明するために、この世界が 5 次元時空以上の世界であって、その中に存在する 4 次元時空のいわば膜のようなブレーンと呼ぶ存在の中にわたしたちが生きているのではないか。という話なのだった。
で、どちらかというと電子書籍版のおまけとして収録された、ヒッグス粒子発見のニュースを受けての寄稿文のほうが案外面白い。ヒッグス粒子とはどんなもので、それを探すにはどうしなくてはならず、実際どうやって探そうとしていたのかというあたりが説明されていてなかなか興味深い。
ヒッグス粒子は誕生してもすぐ消えてしまうのだそうで、直接観測することが非常に困難。いやまず不可能ということらしい。そのため消えてしまう際に他の素粒子に変化するのだけれど、この物質を捉えて分析することで、ヒッグス粒子から変化したものなのかどうかを確認しようとしていたのだとか。
ということで、基礎的な理論物理学の素養をある程度もっているという人なら、もう少し理解を深めることはできるのかもしれないけれど、まったくのずぶの素人が読んでもさっぱりということになりそうな本ではあります。NHK であらためてわかりやすい番組を作って欲しいところ。
![]() | ワープする宇宙 5次元時空の謎を解く リサ・ランドール NHK出版 2007-06-28 by G-Tools |
絶版だけど。
![]() | 二次元の世界―平面の国の不思議な物語 (ブルーバックス 315) E.A.アボット 高木 茂男 講談社 1977-05 by G-Tools |
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