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レインツリーの国

 たまた値段がちょうどよかったので購入したのだけれど、なんだか世間の賑わいにはからずも合致してしまうような設定がはいっていて「なぜこのタイミングで買ったのか」と我ながらいささか驚いていたり。とはいえ、やはりここでもベタな恋愛が展開されているのだった。甘いかどうかは意見のわかれるところかもしれないものの、最終的にはやっぱり十分に甘すぎるくらいに甘い展開で、きょうのおやつはもういいですと思えるくらい(かもしれない)。

 読書の感想をあげたホームページを通じて知り合った男女ふたり。かつて読んだライトノベルの感想をお互いに話しているうちにいつしか直接会ってもっと話したいという思いがつのって実際にあって。というところからはじまる恋物語。ありがちといえばありがち。かつてのパソコン通信の時代にしてもあったろうし、今はもっともっと広い範囲でそういうこともあるのだろうなと。

 パソコン通信時代のほうが自分の好きなこと、趣味としているようなところに参加してだったので、そうした同じことを楽しむ仲間が集まるという意味では、そうした出会い(男女問わず)というのは今よりも多かったのかもしれない。もちろん、今ならそれは差し詰め SNS に場所を変えただけなのかもしれないので、状況はさほど変わっていないのかもしれない。

 まあ、そのくらいであればありきたりと思っていたのだけれど、相手の女性は聴覚障害を持つのだったというあたりで、おー、そう来ましたか、という驚きとなるほどという感心と。そうして単純に障害持っている人はかわいそうだよねだけでもなく、聞こえる人にとっての論理もきっちり描かれていて、身につまされたり理解したり。なによりも一方だけが(多くは健聴者)悪いのだという論理にならずに、聴覚障害を持つ人も変わるべきところはあるのではないか、というところが描かれているのが好感。

 きちんとした取材と調査とに裏づけられながら、書くべきところは有川流で料理しますといった潔さのようなものも変に同情するだけの作品になっていないところ。正直ふたりの恋愛の展開が気になるほうが強いので、聴覚障害そのものについてさほど意識するということがない。もちろん主題ではあるのでそこに対していろいろ考えさせられるし、それについての(健聴者であれば)いままでの不理解・無知というものをしっかり知る機会ともなる。

 なになにだからこうしなくてはいけない、といったことなどあるはずもなく、そんな強さとそこへいたるまでの弱さと葛藤があるからこそ、読後感のとてもさわやかな作品になっているなあと。いや、やっぱりベタ甘です。有川小説は。

4101276315レインツリーの国 (新潮文庫)
有川 浩
新潮社 2009-06-27

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