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図書館戦争


4043898053図書館戦争 図書館戦争シリーズ(1) (角川文庫)
有川 浩 徒花 スクモ
角川書店(角川グループパブリッシング) 2011-04-23

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 今頃になって「図書館戦争」を読んだ。アニメ化だからでもなく、実写映画化だからでもなく、たまたまなのだけれど、なんだか妙に時宜をえてしまった感があってちょっと感動した。

 そもそも内容についてあまり知るという努力をこれまでしてこなかったので、なぜ図書館なのに戦争なのかとか、図書館で武装しているとかなぜ? というくらいにしか思っていなかった。で、今回ようやくにして読んでみてなるほどと思ったものの、もちろんさすがにいささか設定の飛躍に眉をひそめないわけではないものの、なるほどそういう設定でかというところの納得はおそらく話題になった当初よりもはるかに切実に感じることができたのではないかと。

 検閲が合法的にそして恣意的に行われるような法案が成立し、社会から表現の自由というものが実質的に排除されてしまった近未来において、それに抗うために組織されたのが図書隊で、時として武力でもって対抗せざるを得ないところから警察、自衛隊、などと並ぶような存在としての図書隊が存在すると。

 図書館のもつ意味や、出版や表現の自由といったことや、それに対する弾圧。まさに今日本社会に覆いかかろうとしている現実を先取りしたような世界。いや、そんな法律ではないし、そんな内容ではないと言い張る人もいるようだけれど、では今この国が解釈さえ都合よく変えれば自分たちの思うがままであるとしていることをどう理解しているのか。選挙の公約は守らなくてもよいのだと豪語した政党が政権を握っていることをどう捉えるのか。

 なにかあれば政治家という種族は「そういうことを言ったことはない。それはこういう意味なのだ」と言い訳ばかりしてごまかし続ける。誤解を恐れずにいえば、政治家は嘘しか言わない種族といっても過言ではない。そんな彼らが法案を通すためだけにどれほどの嘘をついても、あとからそんなことは言っていないし、そういうことではないと言い張るだけで、いったん決まってしまって手のひらを返して自分たちの本意のままに突き進む。そのためにも法律はできるかぎり曖昧にしておく。解釈しだいでいくらでも都合よく使えるように。

 そんな未来が、「図書館戦争」のような未来がこないとどうして言える? 現実に検閲につながる法律は成立した。これを恣意的に運用しないといっているのは、誰の口だろう? それは本当に信用できる信頼できる人の口だろうか? この世でもっとも信用できない種族の口ではないのだろうか?

 と、現実の話は置くとして、つまりそれほど現実味を帯びてき始めてしまった現在だからこそ、本書を読むとどうにも背筋の寒くなる思いを拭えないのだ。いつか図書館を舞台に戦闘が起こる現実は本当にあるかもしれない。そう思わせるくらいに。

 まあ、つまりはそれは有川さんのうまさでもあるのだけれど。ただ、現実に目を向けたときに、本当にうまい小説だなあで済むのか、もっと考えてみる必要はある。国民は政治に無頓着でありすぎる。一部の国民は過激でありすぎる。選挙の投票率はあくまでも低く、将来のことも現在のことも深く考えることもなく旧来の悪弊にしたがってお気に入りに投票するばかり。次代を担うはずの若い世代の政治離れの拡大は、ますますもってきな臭い社会へと動いていく下地になっていはしないか。

 恐らく、そんな現実との対比や怖さを感じられるような人以外は、そもそも読むことなどないかもしれない。けれど、今こそ広く読まれるべき一冊となってしまったのではないか。今読まずしてどうするのだと。

 さて。

 そうはいっても緊迫した闘いと対比するようにライトに描かれる恋模様の面白さも有川さんの小説の魅力であるのは言うまでもないこと。ここでもこれでもかというくらいにベタなところが描かれていて、とにかくもうニヤニヤするしかない。

 そういう意味では、なんでもっと早く読まなかったのか! と自分に怒りつつ、この先も読まずにどうすると決意するのだった。(いや、決意するとかいうものでは、ないのだけれど)

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