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トランスポート

 チンピラといっていいのか、仕事をするでもなくドラッグを売ったり買ったりといったことで暮らしているような若者アート。結婚してもいいかなと思っている彼女はいるが、彼女のほうは結婚までは考えていない様子。ある夜に彼女の部屋に窓からしのびこむと意識がないようすで、ほどなく救急隊がドアを叩く。病院に連れて行かれるが意識不明のまま。原因はよくわからない。

 彼にもいろいろ聞かれるが事情はわからない。社会福祉士や警察はあまり彼をよく思っていないが、看護士の女性ひとりはふたりの関係を見守りたいといった様子で、ときどき内緒で部屋にいれてくれたりする。

 知り合いのホームレスがタイムマシンを拾ったというのでまさかとは思うのだが、たまたましばらくそこで雨露をしのげといわれて拾ってきたあれこれがある倉庫のようなところに行く。手持ち無沙汰でそのタイムマシンだといっていた椅子に座り、なにげなくしていると気がついたら外にいる。しかも線路の上。あわてて椅子と一緒に逃げるのだが、これは本当にタイムマシンなのか、と少し信じるような懐疑的なところ。

 そのうちにどうやら漠然とした時間へのタイムマシンであるらしいとわかってくる。年月日や時間を指定してというのではなくなになにが起きる直前などといった漠然とした時間へジャンプする。これを使って彼女が昏睡状態になる原因を探り、それを取り除こうと考える。

 彼女の高校時代にいって、あれこれするが不審者でしかない。彼女の家にいけば、兄が拳銃自殺する。とめようとするがうまくいかない。

 クリスマスの時に同級生の男の子がやってきてそれがいけなかったのかと工作したりする。けれどなにをしても彼女の昏睡状態が解決する気配がない。とうとう彼女がまだ小さなころにまで遡るがどうもそうでもない。

 そうしてたどり着いた結論は、つまり彼女が家をでてとあるところまで行こうとした途中のこの街で自分が彼女に声をかけ、ドラッグ中毒にさせてしまったのがそもそも間違いだったのだと気づき、その時点へジャンプ。自分を警察に売り、彼女と接触することをさける。そうして現在にもどった彼にホームレスが尋ねる。「どうだ、彼女のことはうまくいったのか」といったことを。アートは答える、「それ、誰?」。

 もうタイムマシンは必要ない。自分の人生を少しやり直してみたいと思ったアートは旅にでるといってでかける。バスに乗り込んで向かう先には。

 SF 的な観点でいうとタイムパラドックスなんてまったく考慮されていなかったりするので無茶苦茶でしかない。まあお莫迦映画でもあるのでそれはそれで許容すべきなのだろう。全体にただようそうした莫迦さ加減がちょっとひどくてそのあたりはきつい映画なのだが、最後の結末のあたりには人のもつ普遍的な愛のようなものを感じたりしてさほど悪くはない。そういう意味ではもう少し全体に手を入れたらもっとよい作品になったのかもしれない。

 原題は「Fetching Cody」。

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トランスワールドアソシエイツ 2010-11-03

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