髪結いの亭主
なにがあるというでもないけれど、なぜだか惹かれるものを残してしまう不思議な感じの作品。少年時代から髪結いの女性にあこがれて、ついつい頻繁に通い詰める。少年期独特のませた意識や興味というのもあって、美人というわけでもないけれどなぜか惹かれているらしい。
大人になってもまだその意識は変わらずに、いつか髪結いの女性の亭主になることだけを夢見ていて、ついに若くて美しい髪結いに出会い、散髪を頼むと予約があるのですぐにはダメだといわれる。一時間ほどしてというので様子をずっと伺っているが一向に客が来る気配はないまま、時間になって再び訪ねると、何事もなかったかのように髪を切ってくれる。
いきなり「結婚してくれ」と切り出すあたりも奇妙だけれど、その後になって「あのときの話ですけれど」と彼女のほうから切り出して「いいですよ」と受け入れる。ささやかに知人だけを呼んで店でお祝いをして、男はなにするでもなく店にいる。妻が仕事をしているのを、客を待っている姿をただただ見ているのが幸せという風に。
そんな店でいろいろの小さな事件が起きては時がすぎ、なんだかわからないままにすぎていき、そうして彼女が雨の中を買い物に行くと出かけていってそのまま身投げ。戻るはずもない妻が、さもまだ生きていてちょっと出かけているだけなのだという風にお客を待っているというところで物語りは終わる。
うーむ。不思議な映画だ。でも、なぜだか残る。
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