アスペルギルス・オリゼ
NHK スペシャルで「和食 千年の味のミステリー」。またぞろ無形文化遺産になったからというちょっとよいしょっとする番組なのかと思っていたら、まったく違ったのだった。和食の根幹をなす米こうじのお話だった。
なんだ、米こうじか、といささかがっかりしながら見ているとなにやらただならぬ展開に。米こうじは日本にしか存在しないとか。さらには核が複数あるのが特徴で、なかには 10 個もあるものがあるとか。それでいいのか生物学! という素人考えでの驚き。
いわく。核が複数あることによって強い生命力を持っているとか、似た種類のアスペルギルス属はあるのだが、それには毒があると。ところが米こうじにはその毒を作る部分の遺伝子がなくなっているのだとか。恐らくは古来から日本で選別されてきた過程のなかで、毒の遺伝子を持たないもの、そして突然変異的に現れた複数核を持つ優秀なものが残ってきて今日のような米こうじが残ってきたのではないかというのだった。
種こうじもやしというのを扱う業者さんがあって、もはや数えるほどしか残っていないのだというけれど、一子相伝で受け継がれ、全国の醸造元などに卸しているのだとか。そこがなくなればもうダメというのは怖いような、すごいような。米こうじの種を種もやしというそうで、なにやらいろいろ不思議な世界がまだこの国には残っているのだなあと、ちょっとうれしくもなる。
和食の出汁をどうこうなんて話は基本なくて、そのための材料や米こうじをめぐるあれやこれや万歳の時間で実に面白く見た。宣伝ででてきた松たか子はほとんどあてみたいなものだったが(ナレーション役ではあったのだけれど)。
確かに「花咲かじいさん」というのは、こういう元々だったのかもしれないなあ。和食のような繊細な料理は世界のどこにもないと自負してよいのだろうなとあらためて思っていたり。
オリザといったら、やっぱりこれよね。
十六歳のオリザの未だかつてためしのない勇気が到達した最後の点と、到達しえた極限とを明らかにして、上々の首尾にいたった世界一周自転車旅行の冒険をしるす本 (1981年) 平田 オリザ 晩声社 1981-09 by G-Tools |
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