「あなたへ」
ちょっと時間が空いたけれどようやく何度かにわけて映画「あなたへ」を見た。うーむ。NHK の「プロフェッショナル」だかで撮影中に密着していた番組がまずまず良かったので期待が大きすぎたのか、やや微妙な感じが残ってしまった。
亡き妻があえて生まれ故郷の郵便局留めで遺言となる手紙を投函してもらうという手段をとっており、目の前に見せられつつもその場で受け取れないという状況が発生すると。すぐに受け取った一通には故郷の海に散骨して欲しいとだけ書かれていると。局留めの手紙を受け取るためには預かり期間内にいかなくてはならないということで、改造したキャンピングカーで長崎まで出かけると。
そうして亡き妻の意思を想像して散骨も済ませてという、まあ映画なのだけれど、それで? という感じにもなってしまう。なぜだろう。
ひとつにはテレビ放送のためにカットされていたとしたら、そのために部分的に意味の取りづらいところがあったのかもということ。
たとえば故郷に到着してふらふらと歩き回っていてふと見つけた写真館らしきところに飾られた写真を見つめるシーンがあって、なぜそこへふらふら行ったのかがわからない。本当にたまたま出くわしたということだったのかどうなのか。
ところが先の「プロフェッショナル」を思い出すと、これは必然というか探していたというような状況だったように記憶しているのだけれど違ったろうか。たまたまとしてもちょっと唐突にすぎるような印象も拭えない。
受け取ったという手紙についても特に描かれることがなく、最後の最後で「さようなら」としか書かれていなかったと告げたりするのだけれど、それがわからないとその後の心の動きが見えてこない。受け取ったものの、「さよなら」だけでは一体亡き妻が何を伝えたかったのだろうと煩悶する意味が見えてこない。
たまたま寄った食堂の奥さんが、実はもしも舟に困ったらこの人を訪ねるようにと教えられた人物の奥さんであると、なぜかわかってしまうのも勘がよすぎるようにも感じてしまうし。
伝えたい雰囲気はわかるし、なかなかぐっと来るものを秘めた物語とは思うのだけれど、どうもそれらが思念的にしか描かれていないのでイメージで終わっているような印象がするわけなのだった。
亡き妻とのなれそめだけでも十分に成り立つような物語だっただけに、ある意味それ以外が余計に過ぎたのではないかという風にも思ってしまうのだった。ちょっともったいない感じかなあと。
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コメント
亡き妻の抱えていた秘密は、最後まで明かされないし(というか、明かさぬままに妻は去ることを望んだ)、主人公自身の物語も妻との出会いからのち以外はほとんど語られることのない映画ですね。
この作品では、健さんはむしろ狂言回しなので、あのくらいの表現になったのでしょうねえ。
写真館の場面は、何かここに妻とのつながりはないかと町を歩いていたところなので、まあ、半分必然というところでしょう(^^)。
投稿: 黒豆 | 2013.09.02 10:58
なるほど。確かにそうなのでしょうね。
なにもかもすっかりと明らかにすることだけがよいわけではない、と思えばそれもそうなのでしょうね。
それでも、なんとなくもやもやしてしまうのも、多分仕方ないのでしょうね(^^;
総合的には日本的情緒に訴える映画として嫌いではないのですけれど。
投稿: ムムリク | 2013.09.02 11:54