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壊滅の序曲

 読んでみたら意外とあっさりだった。時系列のはじめなので基本的には原爆投下の前の物語。といってもそれに触れる部分もあるにはある。

 それにしても、もろもろよく分からない現状で思うのは、登場人物というのは共通しているのだろうか、と。少なくとも夏の花ではあまり固有の名前はでてこない。私、であるし、K であるし、兄であるしといった具合なので。「壊滅の序曲」では固有の名前がしっかりでてきて家族構成的にはなんだか似ているようにも見えるものの、そういう設定で書かれているのかどうかがよく分かっていない。どこぞでしっかりとした解説を読むべきかと思うものの、まだ出来ていないので。

 総じて言えば原爆投下前のこともあって、空襲警報などがでてあたふたとする場面も多いものの、さほど緊迫した展開というわけではない。それゆえに「広島には落ちないんじゃないか」といった雰囲気が広がったところで原爆投下されたという描写が印象的。もちろんそれは原爆投下を予期したわけではなく、通常の爆撃があまりなかったということを受けてのこと。

 物語としてはむしろ家族関係についての物語という印象が強かった。家族、特に兄弟姉妹とその連れ合いや子供といったところを取り巻く様々な確執のようなものが感じられる。実質的に工場を運営している兄。兄嫁はたびたびふいにいなくなってはしばらくたってから、またふいに戻ってきたり。あるいは疎開させるのだかといって代わりに実の妹を呼び寄せて身の回りのことをしろという。しかし、妹は子供を疎開させているので、できればそばにいてやりたいと思っている、などなど。

 兄弟も三人あまりなのかとおもったが、それぞれいろいろで、なにやら不可思議な家族のようにも見えるけれど、まあどこの家族であろうと似たりよったりの部分は隠しもっているのかもしれない。

 三部作としてやはり冒頭を書かなくてはということだったのだとすれば、なんとなく余計にも思えるこの作品の位置づけというのもわかるような。もちろん、そうであるのかは知らないわけだけれど。

 「夏の花」の凄惨な描写を経験したあとでは、やや無関係にも思えるくらいにひっそりした物語ではあるかもしれない。


 そうか、こういう時代か!

B009IYAPIQ壊滅の序曲
原 民喜
2012-09-27

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