歩いても歩いても
家族というのはもっとも身近な他人のはじまり、といったことはよく言われるわけで、実際親子兄弟であっても自分ではないのだから考え方も違うし、一緒に暮らしているからといって同じように物事を感じ、考えるというわけでもない。逆にまったくの他人であれば許容してしまえることでも、家族であるがゆえに許容できないということだってあるわけだ。
ましてそれが結婚その他によっていわば契約上の書類上の家族となってくれば、もともとまったく異なる生活をしていた者が一緒に生活したり、ひとつところで過ごすことが発生するわけで、それもまたまったくの他人というのとは違った感情を生みやすいのだろうなと。
決してそれが相手を嫌うというつもりではなかったとしても、異なるということがささいなトゲのようなものになってやがてそれがチクチクとうごめくようになっていくとでもいおうか。
はたからはとても穏やかで和やかな家庭に見えても、その実がどうであるのかなどは周りからは決してわからない。時には中にいてすらわからない。まったくの他人であれば、ふと出会うそのときだけを取り繕えばよいのだろうが、家族ではそうもいかない。
そんな思いは大なり小なり誰もが抱えているはずで、そんなところをごくごく淡々と描いているというあたりに素直に恐怖を感じてしまったりする。
けれど、だからといって家族というものがもはや成り立ち得ないほど駄目な険悪なものかといえば、それでもやはり家族なのだなというものはあって、それがこの映画の結末の風景でもあるのかもしれないと。過ぎてみればそれすらも思い出に変わるのかもしれないけれど、なかなかその当時としてはそうも思いきれない。それもまた現実で。
あくまでも淡々とある日のできごとを描いていながら、ついついあれこれ考えさせられてしまう。まあ、つまりはうまく乗せられてしまったということなのだろうな。
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