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国栄えて住民なし

 NHK スペシャルで中国の地方政府と虐げられる住民の問題を追った番組を見る。民間組織として仲裁を請け負う業者というのが出てきたそうで、それが今政府関係からも依頼が増えているのだとか。いわく、どう住民対応してよいかわからない。

 そこだけ聞くとよい話のようにも思えるけれどその実はとんでもなく全時代的なもので、いささか驚いた。

 とある地方政府からの依頼でやってきた仲裁業者の代表者。そこで会った担当役人の言うには、「殴っても脅しても住民が言うことをきかない。どうしたらいいのか」。「そんなことをしても何の解決にもなりませんよ」と業者は答える。「住民の言うことを聞いていたら利益をあげることができないんだ」と役人。

 開いた口をどう閉じたものか一瞬考えてしまうような時間。

 住民の代表と役人を会わせたときだったかには、「町が発展するというのだから、お前たちは少し我慢しろ」みたいなことを言う。補償金はすでに払ったのに、いくらでもむしりとろうという魂胆だろうといったことまで言う。

 住民は土地の権利を持っておらず、地方政府としては中央の命や成果をあげていることをアピールしたいがため、土地の権利を開発業者に売ってその金で利益をあげていると。そのため、住民は強制的に立ち退かされ、補償金はわずかにもらえるが、その後暮らす場所もなく、代替に作られた住居は高額でとても住むことなどできない。開発業者は住民を雇用するという考えはないので仕事もない。そもそも、農地だった場所なので、農民にとっては農作業を継続することもできない。

 このままではただ死ぬだけ。どうせ死ぬなら命と引き換えに中央政府に直訴するといったところにまで進んでいると。ところがこの中央政府への陳情を地方政府は恐れていて、そんな事態が起きていると中央に知られるとまずいとは思っている。

 そこで何をするかといえば陳情にやってきた住民の長い長い行列から住民を連れ戻し、あろうことか拘留してしまったりする。実際取材案件でもひとりの女性が陳情に行くといって以来連絡が取れないと仲裁業者に連絡がはいり、地方政府に連絡をとるが知らないと言い張る。が、ほどなく電話があり、確かに拘留していたのだが、逃げられた。行方を知らないかというのだった。臆面もなく。

 ようやく行方を探りあてた仲裁業者。隙をついて逃げ出したという女性。業者はこれを利用して地方政府と交渉。中央に知られたくないのだったらきちんとこちらと交渉しないかと。そうすれば女性にも中央への陳情はしないと約束させると。

 結局中央に知られたくない地方としては、条件をのむことに。そのさなかにも中断していた開発工事が了解なく再開されてしまって住民が怒りをあらわにして工事を中断させたり。中央政府方面からも住民をどう処理したらよいのか教えて欲しいと仲裁業者に依頼があったり。

 なんとも中国という国は政府さえ潤えば住民などいらないという発展をとげてきたのだなとあらためて感じたり。それならば住民などいらないのだといってどうにかしてしまえばよいのにというくらい。あるいはそうしてどこぞの国のように大量虐殺されて闇に葬られてしまったりする可能性もあるのかもしれないと思うと、背筋の寒い思いもしたり。


追記:
 仲裁業者代表の方が、今の中国を例えて「血塗られた GDP」といっていたのが印象深かったのだった。もちろん、日本だって高度経済成長期において血塗られた歴史がなかったかといえば、きっとそういうわけでもないのだろうけれど。

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