「雲のむこう、約束の場所」
北海道と本州とに南北分断された日本という「もしも」の世界を舞台にした作品。ほほー、と興味を持ったものの南北分断がさほど色濃く作品に影響しているとも思えず、謎の塔の神秘性を増すための設定にとどまってしまっているのはやや残念。
平行世界と夢とをつなぎ合わせて、他の世界のそれと置換されようとするというアイデアはちょっと面白い。少女が夢を見ている間だけは現実世界における置換が保留されていると。
夢と現実と平行世界と。ただ、平行世界に置換されると暗黒になってしまうというのはやや安易か。では、その平行世界にはなにもないということなのかと。たまたまそこはブラックホール的な世界であったとか?
活動家の存在意義についてもやや不鮮明な感じがしていて、物語の根幹をなす部分については面白い設定なのだけれど、やや説得力に乏しいようにも感じた。
反して、少年ふたりと少女との約束部分に関しては単純でもあり、わかりやすく、妙な矛盾もさしてない。長期にわたって中断していたにもかかわらず、あっという間に完成してしまって飛び立つというのはややご都合主義ではあるものの、まあ許せる範囲かとも。
最終的には少女は夢から覚めて、覚えておかなくてはと思っていたことはやはり忘れてしまったようだけれど、結末として明るさの残るのはよかったのではないかと。まあ、全般にやや抽象的にすぎるというところは残念なところではあるのだけれど。
むしろ、もっとシンプルにしてしまったらよかったのかもと。平行宇宙云々などというのはもう少し軽いところにとどめておいて、純粋に約束の場所を目指すということだけを主題にしたら、普通に青春物語という感じで収まったのかもしれない。
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