秒速5センチメートル
一応地元(大きなくくりとして)関連の人ということでもあるし、作品の評判も知ってはいるし、地元企業の CM に映像が使われたりといったこともあって、存在としては知っていたものの、実のところ作品そのものを見たことがないのだった。新海誠。
再登場とあるので以前にも配信されたことがあるらしいのだけれど、うっかりしていたのかなんだったのかまだ見たことがなかった。今回また無料で配信というので見ることに。
ということで手始めに「秒速 5 センチメートル」。桜の花びらの落ちる速度が秒速 5 センチメートルなのよ、と少女が語るところからはじまる物語。互いに転校生だったらしく、クラスから少し阻害された感じのふたりが仲良くなるというのはありがちでもあり、なさそうでもあり。けれど、そんな閉じた世界でお互いを支えあうことで、次第により強く結びついていくというのはありそうでもあり、ある意味理想的な恋愛物語の典型かもしれない。
けれど、子供であるから親の都合によってふたたび離れ離れになって、なかなか思うように会うこともできず、手紙のやりとりだけが唯一のつながり。携帯電話などまだない(仮にあっても小学生や中学生にはまだ持たされない時代、土地)なかで、公衆電話であったり、郵便であったりという手段が妙に懐かしく。
ようやく会うことにしたものの、よりによって大雪。鉄道はことごとく遅延し、女の子の待つ駅に到着したのは予定よりも数時間も遅れた 22:00 近く。それでも待合所にひとり居るところなど見てしまったら。
ここで終われば遠距離恋愛の心あたたまるお話で終わりなのだが、続く第二話では男の子が鹿児島は種子島に転校しての話。すでに高校生になっていて携帯電話も持っているが、どうやら女の子との連絡は疎遠になっている様子。なんども何度もだせないメールを打っては消す。
そんな男の子に恋心をいだく同級生の女の子。けれどもそれをなかなか言い出せない。やさしさが却って胸に痛む。といったあたりが第二話。
そして、終局の第三話はすでに社会人となったふたり。けれどもすれ違いというか、もはや連絡すらとっていないのではないかという。少なくとも男の子からは連絡を避けているようにも。そして、ふたりはそのまま離れ離れなままということで終わるのだ。
映像もよいし、物語としても決して悪いわけじゃない。哀しいけれどよい話だと思う。けれど、現実を見るようでやはりあまりに切ない。虚構の世界くらいは、もっと幸せな物語の結末でよいのではないか。虚構の世界くらい、幸せな結末にしようよ。と、思わなくもない。
ままならないのが、人生とはいえ。
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コメント
第1話の舞台って、参宮橋駅界隈だったんですね。
毎年行ってるのに、気がつかなかった(^_^;
新海さんの(新解さんじゃなくて)物語は、基本的に男と女の心のすれ違いが主題ですねえ。
物語より、「絵」を楽しむ作家という感じですかね。
投稿: 黒豆 | 2013.06.05 13:19
「絵」を楽しむというのはわかる感じがします。
映像としては美しいのですけれど、そんな切ない話ばかりじゃいかんだろう(^^; というような。
投稿: ムムリク | 2013.06.05 16:07