「宇宙へ」をようやく最後まで見る
VHS ビデオだってもう存在が危ういという時代。まして Video Hi8 なんてもう機材がないわけで、いつまでも残しておいても気がついたら見られなくなっていた、などということになりかねない。と、思いつつ後々にしてしまっていた「宇宙へ」を見てしまう。ようやく。
フォン・ブラウンの苦悩であるとか、ソビエトの科学者の悲劇であるとか、実に見ごたえのあるドラマで、もっと早く見ればよかった。
ソビエトのロケット開発を推進したコロリョフは仲間のエンジン開発の先駆者によって無実の罪をきせられて矯正労働収容所に送られてしまうものの、ナチスドイツの V2 ロケットの存在からこれをソビエトのものにするための人材として呼び戻されると。まあ、その人材を推薦したのは、罠にかけた当のエンジン開発者だったわけで、その後コロリョフと表向きはうまくやっていくが、中途からはその関係はますます悪くなっていく。
ソビエトとしてはコロリョフによって当初人工衛星の打ち上げなどアメリカに先んじることができたので、優遇するかに思えたが、かえって彼の存在を極秘とするため名前を明かさず、どれほど功績を積もうと彼自信が表舞台で賞賛されることがない。
一方で、フォン・ブラウンはアメリカにいわば亡命する形でロケット開発の継続を図ったものの、ナチ党員だったことを快く思わないやからが多く、技術的にはすぐれているのに、なかなかそれを採用してもらえない。品質の悪い海軍のロケット計画が優先され、実際には性能もよいフォン・ブラウンのロケットは後回し。予算も少ない。
そうこうしているうちにもソビエトではアメリカに負けることは許さない(いわばそれは死を意味する)という姿勢で開発が続けられる。で、実際に人工衛星にしろ、有人飛行にしろアメリカに先んずることができた。
かといって以降のソビエトの開発はなかなか困窮を極め、コロリョフは道なかばで亡くなってしまう。そうして死後はじめてその名前が世界に知らされ、英雄として葬られたらしい。ソビエトの愚かさ。
といってアメリカがそうでなかったのかといえば、ナチ党員だったという過去だけからフォン・ブラウンを虐げていたアメリカも似たようなもの。安全性が確保できない段階でもソビエトに負けてしまっては駄目なのだと有人計画を強行しようとする動きであるとか。
巨大な推進力を得るためのエンジン開発のすさまじさであるとか。爆発との紙一重の繰り返し。というか実際何度も何度も爆発して失敗。アメリカに負けてはならん。ソビエトに負けてはならん。というメンツだけで競いあう、まさしく宇宙開発レース。
結果としてはフォン・ブラウンはなんとか月着陸まで携わることができたという意味で幸せだったかもしれない。コロリョフは何度かアメリカに先んずることはできたものの、ソビエトという国家体制や仲間に恵まれなかったのかもしれない。
合計 400 分あまりの全 4 回のドラマ。一気見しても時間を忘れてしまうくらいに面白い。
思想はいろいろあってよいとは思うけれど、この時代にあってもまだ危険な国家体制は存続していることを思うと、姿なき不遇な人材がたくさんあるのだろうなと。
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