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ザ・ホステージ

 実際にあった事件を元にした映画らしいのだけれど、どうやら犯人は妄想に取り付かれていたということらしく(そのあたりの真偽も実際どうなのかわからないけれど)、ちょっとどうとらえたらよいのか悩む映画ではあった。

 そろそろ定年に近いかという感じの年齢の男。バスの運転手をしている。会社の金魚の水槽だかの清掃をしてえさを与えるのが日課であり、楽しみでもある様子。妻と娘らは別居中。

 ある日、定期券を持っていないけれどいいだろ? という若い男の乗客を拒否。降りるまではバスを動かさないとばかりにランチを食べ始める。渋々男はバスを降りる。

 誰もいない田舎道のようなところ。車が故障して困っていたらしい品のいい男性が乗り込んでくる。他に客はいないので、いつしかぽつぽつと世間話などしはじめる。施設にはいっている老いた母親を見舞いに行くのだという男。バスが到着して下りるが荷物のアタッシュケースを忘れたまま。

 付近を捜すがどこへ行ってしまったか姿が見えない。ケースを開けるとフィリップスの人間で、かなり上の立場らしいことがうかがわれた。

 運転手の男は何度か製品についての苦情やアイデアを送っていた。はたして彼の送ったものがそこにあった。

 その後、フィリップスの男がたびたびやってきて話をしたり、食事をしたり、「これは新しいテストなんだ」といって謎の施設に招待したり。

 間に別居中の妻を訪ねたり、フィリップスの男から感謝の印としてもらったという家電品を持っていったり。ヨリを戻す気にはなれないのかと尋ねても、それはできないとの返事ばかり。娘にも、もうこないでと釘をさされる。

 冒頭、運転手の男はフィリップスのはいるビルを占拠すべく乗り込むのだが、つい先ごろ目の前の新しい本社ビルに移転したばかり。フィリップス関係者は誰もいない。親しくなった男の名前をつげてこちらにくるようにと要求する。

 ビル占拠とフィリップスの男とのやりとりと、別居している家族と、会社で人員整理にあいかけていく過程と、そうしたいろいろが入り混じっていて、さらにどうやら妄想もそこに含まれている。恐らくはフィリップスの男との話はすべて妄想なのだろうと思うが、まだほかにもありそうで、それがどれかはよくわからない。

 その妄想によって時に暴力的になることがあるのか、きっと家族が別居しているのはそういう理由なのだろうと。けれど、詳細が語られることはない。

 結局、彼の要求は受け入れられず、フィリップスの男はバスの運転手など知らないとテレビカメラの前で会見。そして、男は銃で自殺。

 そもそも、妄想癖のあった運転手の男というのは確かなのかもしれないけれど、その妄想がどんなものであったかは、おそらく知りようもなく、映画としてはひとつの解釈ということなのかもしれない。とにかく虚実の区別がされないままなので、なにが事実なのかわからないまま物語が進行し、終わってしまう。

 なにやら賞をとったのだか、絶賛されたのだか、評判はよいらしいのだが、正直なんといっていいのかわからないとらえどころのなさというのもある。

 ただ、社会病理というのか、そうした人も、そうした事件も増えつつある社会なのかもしれないという怖さみたいなものはあるけれど。

 謎な映画であった。

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