鶏と卵
少しあとでと思っていたら忘れていて時間がたってしまった。で、放っておくとすっかり忘れてしまうので、そろそろ書いておくとしよう。
素直によい出来と思う。「ゲド戦記」に比べたら格段に違う。ただ、それは成長したとという部分も否定しないものの、宮崎駿の力が大きかったなと思わざるをえないところはあるのではないかと。
そもそもの企画・脚本が宮崎駿。物語全体を包む雰囲気や展開といった作品成功の可否を担うといってもいい重要なところはしっかりと抑えられた後のこと。
さらには、NHK で放送された製作途中のドキュメンタリーを見ても、要所要所で宮崎駿によるストーリーボードによる影響は否定しようもなく。逆にそうした影響をあまり受けなかったであろう場面の描き方はいまひとつ物足りないものがあったりもする。
冒頭、海が階段を下りてくる。そして台所なのか、移動していくところは、まるでエスカレーターか動く歩道に乗っているような動きでしかなく、どうも階段を降りている、歩いている、という動きが見えてこない。そうした細かな動きなどは、まだまだ不十分だ。もちろん、それは経験の不足でもあろうから、今後期待できないわけでもない。
物語としても、ちょっとという部分はあって、海の家がいったいなんであるのかが後半あたりまでよくわからない。この同居人はどういう関係なのか? 下宿という感じなのか、いやそうでもないようにも見える、といったあたりで結局よくわからない。最終的にもよくわからない。なんとなくそういうものかと理解するにとどまる。
母親が不在だというのもよくわからないまま続く。なかほどで実際帰ってきてようやく大学の先生でなにやら出かけていたので長期に不在だったのだという様子はわかるのだが、やはり詳細はよくわからない。父親との関係については、その後明らかにされるわけだが、どうもこの家族のこれまでや現在についてはよくわからないままだ。
監督が力を入れて、お気に入りの場面ともいう最後の大型船のタラップに乗り移る場面。演出はわかるし、よいとは思うのだが、やはり描ききれていないために、不自然な動きに終わってしまう。まあ、このあたりも将来に期待ということなのかもしれない。
総じて言えば、やはり本人の成長というよりは、宮崎駿の影響がゲドよりも色濃くあったためにそれなりに成功した作品というのが、無難な評価なのではなかろうかと。やや厳しいかもしれないけれど、本当に本人の力が試されるのは、おそらく次に自分だけで作品に取り組んだものの評価を待つしかないのではなかろうかと。
繰り返しになるけれど、作品は十分によい出来だと思うし、好きな作品だ。
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コメント
ゲド戦記が30点とすると、まあ60点の合格ラインは越えたかな?という感じの出来でしたね。
物語としては、まずまずという感じでした。
人物の動きや表情の不自然さは、最初から最後まであって、ジブリのスタッフが関わっているのに何でこうなっちゃうのかなあ?と不思議ですね。
やはり、親父さんの監督で細かくダメ出しされないとだめなのかなあ?と。
アニメにしろ実写にしろ、映画のセンスってのは、やはり天性のものが大きく作用しちゃう世界なんですかね。
無理にアニメ監督続けなくても、他の道に行った方が、やはり息子のためのような来はしますが(^_^;
投稿: 黒豆 | 2013.01.27 09:40
自分で描けない人間があまり言うのもなんですけれど、でも見ている立場からすれば、やはりよいものを期待しているのはあるのですよね。
なにかというと親と比べられるというのは、もちろんとしても、本当に本人に才能があるのかというところは冷静に判断するべきなのだろうなとは思います。
まあ、どこまでやれるか、というところも含めて今後を見ていたいところではありますね。
投稿: ムムリク | 2013.01.27 11:00