お帰りなさい
引き続き「にっぽん紀行」。福島県伊達市だったかにあるユースホステル。これといってなにもない田舎だけれど、そんなところだからこそ若者に知って欲しいなあということではじめた、みさとユース。今では 86 歳になられたトクさんが細々と営業を続ける。
若かりし頃から通い続ける、今ではすっかりおじさんおばさんになってしまった人々。原発事故の影響。除染された土壌の保管所がすぐそこに見える場所にでき、うずたかく積まれている土嚢。
なにもないけれど、なにもないから楽しかったということも実はあるわけで、豊かさに満ち溢れたなかにばかりいると気づかない、気づけないことというのもまた多く。
皆がより集まって屋根のペンキ塗り。終わったあとは皆で歌を歌う。ミーティング、ありましたなあ。しかし、どうしてユース関係の歌というのは短調のものが多いのか。もっと、こう明るい歌があってもよいのではないか、と知っているものを思い出してもそう思う。ユースラリーのキャンペーンソングあたりがまだ明るかったか?
今ではユースホステルの勢いも昔ほどではないものの、あらたな形態を模索してはじめているところもある。一方でずいぶんと多くのユースが廃業してしまった。かつては北海道だけは勢いを失わずにいたものだけれど、その北海道ですら次々と姿を消してしまい、懐かしい場所の多くも今はない。
残存しているところを訪ねてみたい気持ちはあるのだがなあ。
ちなみに利用経験者にはよくわかっていることだけれど、ユースの運営者(ペアレントと呼ばれる)はお父さん、お母さんに類する呼び名で呼ばれるのが通例。ゆえに、トクさんもおかあちゃんと呼ばれる。番組ではなんとなく特別なことのようにも受け取られかねない印象だったけれど、ユースではそれが普通のこと。
ユースに到着したら「お帰りなさい」、出かけるときには「行ってらっしゃい」。そういう家庭的なところが(つまり、家庭に飢えていた時代だったのか)よかったのだろうなあ。いわば SNS の走りだったのかもしれない。
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