尾瀬
NHK スペシャル「奇跡の湿原・尾瀬」を見る。 冒頭にでてきた白い虹状の映像はタイトルバックのための CG とばかり思っていたら違った。 実際に早朝に稀に見られる現象らしい。 白い虹。
通常の虹は雨粒によって光が屈折して分光されるわけだけれど、この場合それが霧の粒なのだそうだ。 ゆえにきわめて小さいために分光はされているのだけれど、人の目にはその角度がわずかでしかないために結局白にしか見えないという。
ついで思うに、それだけ小さな粒によってできる虹であるために、実に小さなものであるようで、目の前にそれこそ手に取れるような大きさの円弧が見えている。 通常の虹では広い地平のあちらからこちらというように広大なものができるのだけれど、こじんまりとしている。 霧を背景にぼんやりと浮かぶ小さな白い虹、というのはなんとも幻想的だ。
あかしぼの原因は複数のバクテリアによるらしいという発見も面白い。 鉄で呼吸するという古代からのバクテリアも含まれていて、これによって酸化鉄が生じて赤くなると。
これまで経験のなかったという昨年の大雨によって一面泥水になってしまった尾瀬。 しかし、それが数週間程度で徐々に透明度を取り戻していった過程も不思議だ。 こちらの理由はまだよくわかっていないらしい。 そもそも尾瀬沼はまだまだわからないことが多いのだろうな。
で、この番組は自然の不思議を紹介してくれたのだが、もうずいぶん昔のドラマを思い出した。 「尾瀬 山小屋三代の記」(後藤 允、岩波新書)をベースにしたドラマで、長蔵小屋の歴史を丁寧におった、そして厳冬のなかロケをおこなった尾瀬の自然や風景も美しいドラマだった。
たしか長蔵役が北大路欣也だった。息子、孫の代を演じたのが誰だったかはもう忘れてしまったけれど。
冬の間は深い雪に閉ざされ、病になってもおいそれと医者へかかることもかなわない。 生きられる命も失われるのをただ見ていることしかできない。 そんな過酷な地でありながら、なぜそうまでしてそこに留まっていたのか。
後の開発への反対運動とか、必死に守っていた姿が代々きちんと受け継がれている姿にジンとくる。
もう一度見たいなあ。
事実上絶版。
尾瀬―山小屋三代の記 (岩波新書 黄版 263) 後藤 允 岩波書店 1984-04-20 by G-Tools |
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