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黒い国

 [ NHKスペシャル|黒い雨~活(い)かされなかった被爆者調査~ ]

 昨年暮れにある意味渋々その一部だけを公表したという広島における黒い雨のデータ。 被爆者への聞き取りで 1 万 3000 人あまりもの人がどこで黒い雨をあびていたかがわかる資料。 それも含めてどのような症状がでているのかといったことも詳細に聞き取りをしていた。 しかしながら、それはひっそりとしまわれたまま。

 原子爆弾による影響は爆心地から 2km 以内に限定され、残留放射線による二次被曝などというものはありえないのだというアメリカの関係者。 もっとも、それは現在の放射線影響研究所(放影研)のトップ(日本人)も似たような考えたらしく、黒い雨と原爆症との関係はわからないのだから、それを証明しなければ協力するつもりはないとでもいう立場らしい。

 一方で原爆症の認定のための裁判では、被爆者自身が黒い雨を確かに浴びたのだということを証明しなくてはならず、そんなものは到底ありようもない。 じつは放影研にはそのデータがあったわけで、その頃はすでにアメリカだけの機関ではなく、日本も共同で研究する期間となっていたことを思うと、国の側が被爆者が欲しい情報を手の内に隠しておいて、「さあ、自分で証明してみせろ」とでも言っているかのようだ。

 当時 ABCC で統計の担当者だったというウッドベリー博士が黒い雨に疑問を持ち、もっと詳細な調査をするべきだと訴えたらしいのだが、結局は本国の会議に呼ばれて後に辞職したというのは、「きみ、わかっているだろうね? これはアメリカにとってゆゆしき問題なのだよ」といったことでもあったのではなかろうかと。 事実、アメリカとしては原爆は爆心地以外ではまったく被害をもたらさないのだと自信を持っていたらしいわけで。

 しかしながら、原爆などというものははじめて使ったわけでこれまで実際の記録があるわけでもない。 にもかかわらず残留などせずに一瞬で消滅してしまうかのような発想というのは、政治家はともかくとして科学者としてはどうなのかと思わざるを得ない。

 水俣病にしても指定海域の魚を多量に食べていたことを自ら証明しろとか、SPEEDI にしても悪までも推定のものでしかないので意味が無いから発表しなくて問題はないとか(それならばそもそも大金をかけて開発する意味がない)、どうもこの国は国民をモルモットにしか思っていないのではないかというふうに思ってしまうのは考えすぎか。 少なくともなんでもかんでも申請主義の悪弊の極みを見る思い。

 被爆者の協力を受けて、今も放射線による人体への影響を継続調査・研究しているというのに、そこで得られたデータや知見が本当に被爆者のために生かされているのだろうか、と疑問に思ったり。

 オリンピックに浮かれているなかでも、きっちりと 8 月 6 日にはこうした NHK スペシャルを放送するあたりは民放にも見習って欲しいような。 いや、まあそれはどうでもよいのか。

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