「夏の花」
![]() | 夏の花・心願の国 (新潮文庫) 原 民喜 新潮社 1973-07 by G-Tools |
確か岩波文庫版で持っているはずなのだけれど、あらためて読み直してみるとあまり読んだという記憶がない。 これほど強烈な内容が残らないはずもないので、あるいは読もうとしてそのままになってしまったか、はたまた他の作品を読んだところでとまっていたか。
原爆も原発も依るところは同じなのだから、まして日本が使うべきではないのだという論もある。 そもそも人間がまともに制御できないものを使うことが間違っているという論もある。 となれば、レントゲンもやめるべきなのだろうし、あれもこれも危険性を排除できないものはやめるべきなのだ、という論もまたなりたつ。
ということを言い出すと切りがないし、それは本題ではないので置くとして、少なくとも無差別殺傷兵器として使用される原子爆弾がいかにむごたらしい結果を巻き起こしたのかという事実は、唯一の原爆投下を受けた国としていつまでも伝え続ける必要はある。
「夏の花」を読んで思うのは、あまりに凄惨な風景にも関わらず、非常に淡々と描写していて、それが却ってむごさや怖さをじわじわとしみこませていくような読後感。
意味不明な言動をしている多くの人や、すでに死んでしまっている赤子を抱いたまま歩く母親であったり、水を求める人、川を流れる人、不安からあらぬ妄想を見るのか、なにかを叫ぶ人。 誰もがやけどをおい、かつての姿に気づけない人もある。
そんな中でも必死に歩き続けてどこかに行こうとする。 文字だけであるから凄惨さが弱いというのではなく、その筆致がやはり事実をありのままにという思いにあるのか、ある意味冷ややかであるがゆえに、漫画や映画では描けない姿というのがあるような。
地図の上でおおよその移動経路を見ていくと、かなり広範囲にわたってさまよったようなあとが見える。 けれどもどこもかしこも焦土であったわけだ。
「黒い雨」に比べるとやや取り上げられることが少ないかもしれないけれど、読まれるべき作品ではあるなと。 今日という日にあらためて思う。 三部作ということなので、近々残る二作も読む予定。
たぶん、ダンボール箱のなか・・・
![]() | 小説集 夏の花 (岩波文庫) 原 民喜 岩波書店 1988-06-16 by G-Tools |
実はこっちも読んでないのだった。
![]() | 黒い雨 (新潮文庫) 井伏 鱒二 新潮社 1970-06-29 by G-Tools |
![]() | 夕凪の街桜の国 (Action comics) こうの 史代 双葉社 2004-10-12 by G-Tools |
早く復刊すべき。
二年2組はヒヨコのクラス (理論社名作の愛蔵版) 山下 夕美子 長 新太 理論社 1983-10 by G-Tools |
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