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七の夕べ

 本来的には旧暦でのことだから現在の暦の 7 月 7 日ではもろもろの条件がそもそもよろしくない。 という話は割りと知られているような気はする。 だいたいにおいて日本はほぼ梅雨の最中。 そうそう晴れてくれるはずもない。 さらには件の星が昇ってくるにはまだ時間がたたねばならないので夕暮れから宵の時間あたりでは姿を見るにはやや不便だったり。

 もっとも、雨の季節というのは余計にせめて今夜くらいは晴れてくれたらよいのにという思いを強くさせる効果を生じさせるには、もってこいの要素ではあるかもしれない。 宵っ張りになった現代社会としたら、夜半くらに見ごろになるくらいがちょうどよいのかもしれない。

 昔であればこのあたりでは 8 月にはいってから旧暦の七夕を祝うなどということもあったように思うのだけれど(祝うというのもちょっと奇妙か)、さすがに今では幼稚園などをはじめ 7 月に各種行事を行うのがほとんどのようではある。

 まあ、 7 月 7 日というのだから仕方がないとはいえる。

 新聞には白鳥座の部分を雨傘と線で結んで見せているのだけれど、それはなんだかなあと。 デネブがかわいそうだよ。 アルビレオが泣いているよ。 青い涙を浮かべているよ。 8 月になったらぜひ望遠鏡で観察を。


 さて、ロマンのない話にはなるけれど、「宇宙と星」(畑中武夫)から引用を。

七夕の夜一晩中見ていると、牽牛と織女が本当に近づくのですか、と真顔でたずねられたことがある。 そうですよ、と言いたいところだが、残念ながらこの二つの星が一晩のうちに近づき、また離れるということはない。 織女星はわれわれから二六・五光年、牽牛星は一六・五光年の距離にあり、お互の距離は一六光年もあるのが現実の姿なのである。 世の中で一番早い光のスピードを以ってしても一六年かかるのだ。 一晩で逢いに行って戻ることは、いかに天上の話でも無理である。


 よい本なのだが、事実上絶版である。 もったいないなあ。

400416012X宇宙と星 (岩波新書 青版 247)
畑中 武夫
岩波書店 1956-07-10

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