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変身

 あまりに著名で必読といわれるくらいとは思うのだけれど、これも未読であったので読んだ。 ひとことで言えば哀しい物語だなあと。 ある朝目覚めたら甲虫になっていて、家族はもちろん誰とも会話が成立しなくなってしまう。 食べることも生活も一変してしまう。 家族にも毛嫌いされつつ世話をされ、それでもひっそりと生きつづけている毎日。

 そして、ついには人間に戻ることもなく死んでしまったら、家族は意気揚々と新しい生活へ向けて出て行ってしまう。 兄さんが死んでくれて清々した、といわんばかりに。

 哀しい。

 その一方で、小説としてみたときになんとも 破綻している 整合性が崩れている なあという部分が多くてちょっとよろしくない。 というか、そのあたりが目に付いてしまって主人公の哀しみが軽くなってしまった。 あくまでも自分の中で。

 甲虫になってしまった直後、家の中では大騒ぎ。 ここで娘がふたり登場するのだが、以降は妹がひとり出るだけ。 もう一人が女中とかかというとそうでもない。

すぐさま、二人の娘はスカートの音を立てながら玄関の間をかけ抜けていった

 グレーテとアンナのふたりが確かに登場しているのだが、その後グレーテひとりしかいないことになってしまう。 アンナという娘の存在そのものが消えてしまう。

 次に、鍵のかかった部屋から出ようとしたときに、体が大きくて簡単に通れずに結局傷を作ってしまうのだが、その後はなんの問題もなく部屋を出入りしている(部屋を貸したあたり)。

 女中は主人公ザムザが甲虫になってしまった直後に暇をもらって出て行ってしまったはずなのに、ひと月以上あとの場面でまだいることになっている。

 妹グレーテの年齢が 16 だったり 17 だったりする。

 などなど。 ひょっとするとテキストの間違いなのか、と思わないでもないのだけれど、単語レベルでない部分というのは間違いようがないのでその通りなのだろうなと。 あるいは翻訳の時点での間違いという可能性も否定はできないわけだが。

 まあ、そのあたりに目をつぶると、これってこんなにも救いのない物語だったのかとあらためて哀しくなってしまうのだった。

4480206655筑摩世界文学大系 (65)
フランツ・カフカ 原田 義人
筑摩書房 1972-08

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追記:
 「破綻」というのはややおおげさだったので「整合性が崩れている」と改めてみた。

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