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結婚は殺人の現場


4488150098結婚は殺人の現場 (創元推理文庫)
エレイン・ヴィエッツ 中村 有希
東京創元社 2012-04-11

by G-Tools

 本が好き!経由で献本していただきました。ありがとうございます。

 たとえばシリーズものの物語を書こうとしているとして、さて次はどんな設定でどんな舞台を用意して書こうかというのは、なかなか悩ましい問題ではなかろうかと。日常的にアンテナを張っていて気になること、面白そうなことなどあるとは思うものの、それらをどう料理してやろうかというとっかかりに工夫が必要であったりもするのでは。

 そんな観点でみるとエレイン・ヴィエッツのこのシリーズはなんとも素敵な設定で、ベースとなる設定というかネタが決まればあとは付随的に全体を埋め込んでいけるかもしれない、というユニークさがある。

 あくまでも「かもしれない」ではあるけれど。

 崖っぷちの生活で、低賃金の仕事を点々としてなんとか生活しているというヘレンを主人公としているので、彼女が転職した先々がその都度の物語の舞台であり、崖っぷち生活にひけをとらないくらいに混沌とした職場や仕事を取り巻く環境がどんな事件でも起こしてくれる素地を与えてくれている。

 いうなれば職業の数だけ物語りが生まれる可能性をもったシリーズという、なんとも画期的なシリーズ設定なのだ。

 あくまでも「可能性」ではあるけれど。

 今回はブライダル衣装の販売店店員。セレブたちのすさまじいくらいな恥部をこれでもかと展開してくれる。もちろんそれは極端な世界ではあるものの、似たようなことは割と身近に転がっている。こうしたセレブ相手の皮肉を面白おかしく台詞まわしさせるうまさは、このシリーズの楽しみのひとつ。

 ただ、今回は前作に比べてややミステリー的には弱い印象。娘の結婚式なのに自分のほうが主役になろうとしている嫌味な母親が式後に遺体で発見されるという事件。親族ら関係者にありあまるほどの容疑や動機があるにもかかわらず、式の手伝いで行っていて遺体発見者となる主人公ヘレンにばかり執拗に重要な容疑者としてあたる警察というのは、どうもしっくりしない。

 ヘレンにはあまり警察沙汰や新聞沙汰に巻き込まれたくない過去があるということから、多少は思い込みによる演出はあるにしても、今回はややそれが行過ぎた感が強い。そしてそれが強すぎるためか、大方予測がつく犯人像なのに結末はやや唐突で物足りなさが残ってしまう。

 展開としては十分に楽しめるし、なかなかよいのだけれど、その途中があまりにだらだらしすぎている嫌いがある。殊にヘレンの恋人のところに離婚調停中の妻が泊まりにきてしまう件は冗長に感じるくらいだ。インターミッションも必要ではあるけれど、少々やりすぎた印象が残ってしまう。

 ミステリうんぬんを期待するよりは、コメディ要素たっぷりの冒険活劇といった趣で楽しむのが、このシリーズの正しい捉え方かもしれない。少なくとも読みおえてしまうのを悔やむくらいにはハマることは保証付き。

 はたして次はどんな職業につくのか。


「この結婚って、どのくらい長続きするかしら?」ヘレンがもらした。

「“ミリセントの結婚の法則”を教えてあげる。結婚期間の長さは、結婚式に費やした金額に反比例するものよ。お金を使えば使うほど、早く終わる。この結婚は、長くても一年しかもたないわね」
(P.52)


# もっともそれゆえにひとつの職業について十分な調査をしなくては書けないという問題があるので、執筆は案外ゆっくりなのかもしれないのが杞憂といえば杞憂。

#今回の邦題はこれまでに比べてやや不満な感じも。 Just Married にかけた Just Murdered なのだから、もうひとひねり欲しかったか。



結婚は殺人の現場 (創元推理文庫)
  • エレイン・ヴィエッツ
  • 東京創元社
  • 1050円
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書評

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