どりこの焼き
子供の頃から慣れ親しんだ味にどりこの焼きというのがある。いわゆる今川焼きとか回転焼きとかいうものと同じものと思えばまず間違いないのだけれど、長野市のただ一軒ではどりこの焼きという名称だった。もちろん、今川焼きとか回転焼きという名前はずっと後になって知ったもので、なるほど世間的にはそういう名称が広く使われているのかと思う程度で、やっぱりどりこの焼きだよなあ、という感じでいたのだった。
とはいえ、はたしてその「どりこの」ってどういう意味なのかはずっと謎に思っていた。いつか店で尋ねてみようかなどと思っていたものの、なかなか出かけていく機会もないまま過ぎていたのだった。
ところが暮れも近くなって新聞の書評欄に「伝説の「どりこの」」などという書名があるのを見て、「これか!」と。さっそくに購入してぱらぱらと読んでみると、なるほど滋養料どりこのブームにあやかっていろいろな食べ物がでてきたらしきことがでていた。どりこの饅頭だのどりこの焼きだの。
そして「長野ではどりこの焼きがあった」などとあるので、さらに「おおっ!!」などと思ったのだが、期待に反して紹介されていたのは中野市の話。さらにはどりこの焼きではなく、どりこ焼きだったという昔話だった。
いや、長野市では現役ですから。なぜ、それが取材にひっかからなかったのか。
ということでしばらくぶりに訪ねてみたのだった。いまだ健在であった。
昔はテーブル 6 つくらいはあったかという店内で飲食ができる喫茶のような茶店のようなところだったのだが、今ではどりこの焼きを売るだけになってしまっている。恐らく 30 年あまり前からは販売するだけに変わってしまったかと思うのだが、時代の流れということかもしれない。
思い切って尋ねてみたものの、先代からは特に聞いていないので由来についてはわからないということだった。写真など撮っていたら通りがかった観光客らしき方々が、なんだなんだ? と店にはいられて買い求められていくことになり、はからずも客寄せパンダ状態になったのだった。
昔はひとつかふたつ同心円がデザインされていたのだけれど、今では焼き型が変わったためなのかなくなってしまっていた。そのあたりはちょっと残念。とはいえ、今川焼きなどの焼き型はみなこうした平板なものなので、特注で線をいれてもらうと値段が高くなってしまうだろうし。止むをえないのだろうなとも。
「伝説のどりこの」によれば、どりこの焼きと称して売られていたものが特別どりこのを使っていたのかというとそうでもないようで、人気にあやかっただけなのかもしれないし、あるいは当時は少しくらいは生地なりに使っていたのかもしれない。もちろん、今となっては基本的には他の今川焼きなどと大きく異なるということではないのだろうとは思う。
ただ、それでもやっぱりどりこの焼きには懐かしさを覚えるし、たとえそれが特にほかと変わり映えのないものだとしても、時として食べたくなる、そんな昔懐かしい味のひとつなのだよなあ。いつまでも残るとよいのだがなあ。
ということで長年の謎が(おそらくはまず間違いなく)解決したのだった。
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コメント
実は小学校の半分と中学時代は長野市に住んでいたのでどりこの焼き、懐かしいです。私も名前が不思議だったので、由来を知ってびっくりです。結構あやかり主義というかいいかげんなあれだったんですね(笑)
どりこの焼き、今も健在なんですね。懐かしいな~。つるやの酒饅頭とどりこの焼きは思い出の味です。
投稿: ぽんず | 2012.01.09 10:41
つるやの酒饅頭も強烈に誘われる匂いですよね(^^;
細々ではありそうですが、昔からのお店が残っているのはうれしい限りです。
機会がありましたら図書館などで本のほうもご覧くださいませ。
投稿: ムムリク | 2012.01.09 10:57
追記として。2016/4/23現在
なにやら閉店したのかという検索跡があったので確認に訪れてみると、はたしてよろい戸が閉められており、どうやら店は閉められてしまった様子。
いつからなのかはわからないものの、残念ながら「どりこの焼き」は消えてしまった。
投稿: ムムリク | 2016.05.02 08:55
昔長野市にパレス映画館があった頃、その映画館の真向かいに金魚を売っているお店があり、そこで通年どりこの焼きを売っていました。夏になるとかき氷もありました。
ここのどりこの焼きは、あんこと野菜の2種類で、ヒョウバンノお店でした。
投稿: | 2022.07.18 18:51